アニメーション動画は、サービス紹介・採用・広告など、幅広い用途で活用される人気の動画です。
表現の自由度が高く、実写では難しい世界観の演出や複雑な概念の可視化ができる一方で、「どれくらいの予算を見ておけばいいのかがわからない」という声もよく耳にします。
実際、アニメーション動画は制作の自由度が高い分、構成・デザイン・演出のレベルによって費用感が大きく変動します。
見積もりの数字だけを見ても、高いのか安いのか判断がつかないという方も多いのではないでしょうか。
本記事では、アニメーション動画の制作費を左右する要素や、予算別でできることの違いをわかりやすく整理し、はじめての方でも判断しやすくなるよう解説します。
「限られた予算の中で、納得感ある動画をつくりたい」という方は、ぜひ参考にしてみてください。
筆者のプロフィール
まず、この記事を読んでいただくにあたって「誰が何を書いているのか?」も非常に重要な要素になると思いますので、簡単に私のプロフィールをまとめています。

【株式会社case 代表取締役/動画制作プロデューサー:加藤智史】
新卒で入社した動画制作会社で広告・マーケティング・採用・人材研修など約400本の動画制作に携わる。その後、TVCMなどの制作を行う、大手制作会社にアカウントエグゼクティブとしてジョイン。数千万円規模のプロモーション案件に携わり、動画にとどまらないクリエイティブ制作やプロジェクトマネジメントを経験。現在は本メディアの運営を通じた企業動画の受託制作や、動画制作会社の営業支援などを行う。
動画制作会社(予算数十万円〜数百万円)での営業兼プロデューサーとしての役割を中心に、広告代理店(予算数百万円〜数千万円)でのアカウント(クライアントと社内クリエイティブチームの窓口、PM業務を担当する役割
なども経験しているため、比較的高い説得力で本記事をお届けできるのではないかと考えています。
アニメーション動画の制作費の考え方
今回はこちらの動画で考えてみましょう。
まずは、読者の皆様が思うように想像してみてください。
動画を要素分解してみる
実写の動画と同様のモーショングラフィックスの動画も制作費をイメージするために、
参考とする動画やイメージに近い動画があればその動画を要素分解して考えてみましょう。
要素分解してみるとはつまり…
- 動画に映っているもの
- 動画に入っている音声
の2つに注目しましょう。
①動画に映っているもの
- キャラクターのイラスト
- その他のオブジェクトイラスト
- 背景
②動画に入っている音声
・ナレーション
・BGM
割とシンプルなモーショングラフィックス動画を選んでみたのでこちらも要素としては少なめです。
要素の成り立ちを考える。
まずは「映っているもの」がどのように成立しているかを考えます。
<動画に映っているもの>
・キャラクターのイラスト
・その他のオブジェクトイラスト
・背景
全てイラスト、デザインなので
- クリエイターが制作している
- ライセンスフリーの素材を購入している
- 企業が持っている素材を活用している
のいずれかであると考えられます。
制作費はイラストやデザインの制作/調達にどれくらいの労力やコストがかかるかによって大きくかわるので、
上記の場合だと1が最もコストがかかり、3の場合は制作上のコストは0です。(購入費用は必要になりますが)
これだけでは、あまり参考にならないと思いますのでもう少しだけ説明してみます。
特に1の場合どのように金額が変わるのかというと、
- イラスト、デザインの数
- イラスト、デザインのクオリティ
- 動画の中での動き
これらのバランスで大きく変わってきます。
今回事例にあげたものをシンプルなモーショングラフィックス動画だとすると、
もう少し複雑で制作費が高くなるのは下のような動画です。
1シーンで同時にいくつものイラストが動いていたり、細やか・なめらかな動きの場合はイラスト素材の数も増えますし、
編集の工数も増えるので制作費は高くなる傾向にります。
<動画に入っている音声>
・ナレーション
モーショングラフィックスの動画の場合、ナレーションが入っているケースが多いです。
ナレーションを収録する場合は通常、
- プロのナレーターをキャスティングする
- スタジオで収録する
という工程が必要になります。
ナレーターのキャリアや実績によってキャスティング費は数万円〜という感じです。
スタジオ費も1時間あたりで費用が決まっていて広さや設備、立地によってバラバラです。
・BGM
こちらは聞いてもわかりませんが、おそらくライセンスフリーの音源だと思われます。
参考までにライセンスフリーの音源は数千円〜で購入可能です。
制作体制を想像してみる
これまでを踏まえて、事例動画がどのような制作体制で制作されたものなのかを想像してみましょう。
・ディレクター(監督) 1名
・イラストレーター/デザイナー 1〜2名
・エディター 1名
・ナレーター 1名
・ミキサー(収録スタジオで音を調整する人) 1名
・制作進行係 1名
という感じでしょうか。
ちなみに、今回のようなモーショングラフィックス動画の場合ディレクター、イラストレーター(デザイナー)、エディターを1人が兼任するケースも珍しくありません。(だからと言って安くなる…とも限りませんが)
具体的な制作費は、上記人員のスキルや稼働日数・制作条件によって変動するため、想定される人件費を算出しての計算は割愛します。
予算別のサービス紹介動画制作の具体例
どれくらいの予算で、どんなサービス紹介動画が制作できるのか…?というのは気になりますよね。
サービス紹介動画は自前で用意できる環境や人員(見栄えのする撮影場所や、お話が得意な人)によって大きくクオリティが変動するので、一概に「この金額があればこのクオリティが実現できる!」というのは難しいのですが、参考値として、30万円・60-80万円・100-150万円・200万円以上でどんなサービス紹介動画が制作できるのかをピックアップしてみました。
30万円
30万円というのは、制作会社に依頼する際のミニマムな金額にかなり近いと言えます。そのため、ゼロからデザインを書き起こして制作するというのは難しく、基本的には購入素材を組み合わせて動かす形で制作する、もしくは素材自体を発注側から提供することがある程度前提になると考えておくとよいでしょう。
60-80万円
50−60万円ほどの予算があると、動画のクオリティを30万円のときよりもグッと上げることができる…とまでは行きませんが、ある程度素材を制作会社側で用意する、書き起こした上で動画制作を行うことができます。
100-150万円
100-150万円ほどの予算が用意できると、しっかりとデザイン・イラスト素材を書き起こしで制作し、アニメーションさせることが可能になります。自社サービスのコンセプトやブランドイメージを動画でしっかりと表現することを考えると、これくらいの予算を確保したいところです。
200万円以上
200万円以上の予算になると、格段にクオリティが上がります。
・デザイン、イラスト素材制作時のコンセプト策定
・コンセプトに沿ったデザイン、イラスト制作
などに始まり、アニメーション・動かしのレベルとしてもかなり高いものになってきます。
動画制作の外注を失敗しないための、4つのポイント
予算を抑えながら、それでもクオリティも求めるとなると動画制作における「ポイント」をしっかりと抑える必要があります。失敗しないための4つのポイントをお伝えします。
適切な制作会社を選ぶ
「それができれば苦労しない」と言われてしまいそうですが、前述の通り、やはりこの点は重要です。
ここでお伝えしたいのは、「信頼できる営業担当者を選ぶ」という視点をもってみることです。
筆者が動画制作に携わり始めた10年ほど前とくらべると動画制作会社は格段に増えました。そしてどの会社も甲乙つけがたいほど豊富な制作実績を持っています。(弊社はまだ会社としての実績は少ないですが…)
その中で何をポイントに選ぶか?の1つのポイントが上記の「信頼できる営業担当者を選ぶ」という視点です。
詳しくは下記の記事にまとめていますが、端的にお伝えすると、

- 優秀な営業担当は、優秀なプロデューサー、優秀なクリエイターをアサインできる
- 優秀な営業担当は、無用なトラブルを避けてくれる
- 優秀な営業担当は、コミュニケーションがスムーズ
という3点です。「絶対この会社がいい!」と思える会社が見つからず悩むことがあればぜひ参考にしてみてください。
そしてもし悩むようであれば、ぜひ筆者にもご相談ください。
スケジュールに余裕を持つ

基本的なことではありますが、何らかの理由で急いで制作を進めなければならないケースもあります。そのような場合、
- 人的なリソースを確保するために通常スケジュールでの進行よりもお金がかかる
- 急ぐ分、準備・確認に通常より時間を割くことができず何らかのトラブルが起きる可能性が高くなる
…というリスクがあります。
会社によっては、短納期でも費用を抑えて制作してくれる会社もあるかもしれませんがそれでもスケジュールを短縮するということは、どこかでなにかを犠牲にせざるを得ません。
もちろん、通常スケジュールよりもトラブルが起きる可能性が高まるというだけで、「必ずトラブルになる」「失敗する」わけではありません。制作に慣れているプロが進行する以上、トラブルの種は極力排除し最大限問題なく進行できるよう尽力することは間違いありません。
ただ、それでも想定外のトラブルに見舞われることもあるのが動画をはじめ、クリエイティブ制作の現場です。
だからこそ、できる限りスケジュールには余裕を持つことを強くおすすめします。
完成イメージをできるだけ具体的にする
いざ、動画制作をスタートする際には制作会社側からどのような動画が完成する予定であるかは絵コンテやシナリオなどの資料を用いて説明があるはずです。
動画制作に慣れていれば、そのような資料で具体的なイメージを持つことができますが、初めての場合にはそれでもイメージが難しいこともあるでしょう。
そのような場合には、遠慮なく制作会社側に質問してイメージの具体化に努めましょう。
制作過程で完成イメージの認識の相違などのズレが生じてしまうと、軌道修正には時間とコストがかかってしまいます。
社内調整を怠らない
発注側の企業の担当者の方の役割の1つが、自社内のステークホルダーとの共通認識の形成です。
- こんな目的でこんな動画を制作します。
- これが完成イメージです。
- いつころ完成良い体です。
- このタイミングでシナリオや動画を確認して、いつまでにフィードバックしなければなりません
…などなど、動画制作の背景や前提、クリエイティブイメージ、スケジュールなどについて関係者としっかりと「握る」ことができていないと、後になって「どんでん返し」が起きることは珍しいことではありません。
特に、動画制作について最終的なOKを出せる決裁権者とのすり合わせは重要です。