一定キャリアを積まれたビジネスパーソであれば、「5W1H」で情報を整理するというのはおそらく1度は経験があるのではないでしょうか。
「なぜ」「いつ」「どこで」「だれに」「なにを」「どのように」
言葉にするとシンプルですが、動画制作を外注される際に以外と見落としがちのがこの情報整理です。
動画制作を外注する際には簡単にでも(できれば精度高く)5W1Hで情報を整理しておきましょう。
今回はこの情報整理がなぜ重要になるのかについて、簡単な例示も交えてご説明します。
※「when」については純粋に「いつまでに動画が必要なのか」を決めるだけなので割愛します。
特に重要な3W(Why,Who,Where)
ここで言う3Wとは、Why,Who,Whereの3つです。
なぜ、このWhy,Who,Whereの3つが特に大事なのかというと、これらの情報は発注者側からしか得ることのできない情報だからです。
例えばTVCMや1,000万円単位で予算の確保されているプロジェクトであれば広告代理店が情報を整理し、要件を定義した上で企画提案を行うというケースはあります。
しかし、多くても200〜300万円の予算しかないという状況ではいわゆる要件定義まで外注するというのはおすすめできません。クリエイティブに当たられる工数や予算を削ることになり、期待を下回る制作になる可能性が高まります。
だからこそ、5W1Hにおいて特にWhy,Who,Whereについてはしっかりと社内で議論・検討した上で共通認識を獲得しておく必要があります。
一方で、What,Howについてはしっかりと3Wの情報が整理されていれば動画制作会社側でも推測・提案が可能です。
特にHowについては動画制作会社からのアイディアが最も必要となるポイントです。
動画によって表現・訴求できるものが何(What)なのか。それはどの様な(How)表現や活用によって最大化されるのか。
動画制作会社の経験や実績に基づいた提案は、精度の高い3Wの情報があってこそ意味のあるものになります。
なぜ(Why)動画を制作するのか
Whyが明確でないままに制作がスタートしてしまうと結果的に
「動画としてはは悪くないけど、これ何に使うんだっけ…?」
「いろんな情報が詰め込まれて何が言いたい動画なのかよくわからない」
という仕上がりになるというのは「あるある」です。
制作会社側としては、「もっと情報を精査し、訴求ポイントを絞った方がいい」と提案しても最終的には発注者側の決済者の判断によって「あるある」な状態になってしまうことがあるというのは、制作会社側としては如何ともし難い部分であり、悲しいことにそのようなケースは少なくありません。
また、制作進行中に「そもそもなんのために制作してるんだっけ…?」という議論が巻き起こり、納期に間に合わない・制作予算が膨らむ・制作中止となるケースも多々あります。
こんな悲惨な結果を招かないためにもこの「なぜ(Why)」については自社内でしっかりと共通認識を得ておく必要があります。
なぜ(Why)の精度
企業担当者に「なぜ動画を制作するのか」という質問をすると、
- 採用活動に使いたいから
- 営業ツールとして使いたいから
…くらいの精度で回答が返ってくることがしばしばあります。
これでは制作会社へ伝える情報の精度としては不十分です。
イメージ的にはこのレベルの回答に「なぜ?」と、あと3〜4回ほど問いかけた先にある回答が制作会社へ伝えて欲しい情報の精度です。
例えば…
- 採用活動に動画を使いたいのはなぜか?
→前年度の採用目標を下回ったため、打開策が必要だと考えている。 - なぜ採用目標を下回ったのか?
→面接には人が集まるものの、その後の選考へ進んだ人数が想定よりも大幅に少なかった。 - なぜ面接に来た人はその後の選考に進んでくれなかったのか?
→採用情報と面接で得られた情報のギャップ
→面接官の印象
→採用競合に取られてしまった - その原因/要因はどこにあるのか?
→……………
少なくともこれくらいまでは、制作会社へ声をかける前段階に整理しておき社内でも共通認識を獲得しておきましょう。
誰に(WHO)みせるのか
とてもシンプルな話ですが、「Why」の精度やどこで(Where)みせるのかに影響される部分もあり意外とすんなりと決まらないケースがあります。
クライアントに質問すると「改めて確認・検討します」ということもしばしばです。見せる相手が決まって無いってどういうこと…?とお思いの方も多いと思いますが、これが本当に意外とあるのです。
例えば、引き続き採用活動の一環で動画を利用する場合を想定してみます。
新卒採用か中途採用かは今回は考慮しませんが、いずれにしても最近はネットからのエントリーが大半です。
そうすると、
- ネット上でエントリーしてくれた求職者
というのが最も大きな視聴者像となります。しかし、その会社が求めているのが「体育会出身のガッツある20代」となると動画を見るのは「ネットからエントリーした求職者」ですが、しっかりと企業の魅力を訴求すべきは「体育会出身のガッツある20代」ということになります。
更に、「ウチで活躍してるのは男性が多いんだよなぁ」とか「男性比率が高いので、女性にも来て欲しい」となってくると
- インターネットで応募してきた、体育会出身の、ガッツある20代男性(女性)
とかなり具体性を帯びてきます。「誰にみせるのか」を考える上では、具体性を帯びることは良いことですがここで問題になるのは、
「その視聴者像に当てはまる求職者はどれくらいいるのか?」
ということです。
- インターネットから応募してきた求職者
が実績として1,000人いるから、その1,000人にアピールできるのであれば今回の〇〇万円の予算は使ってもOK!という話になっていたとすると、実際その1,000人の中でインターネットから応募してきた、
「体育会出身のガッツある(ありそう)20代男性(女性)」
に当てはまるのは100人しかいませんでした…という可能性は大いにあるため、「改めて確認/検討します」ということになるわけです。動画制作において「誰にみせるか」という視聴者像が必ずしも具体的である必要はありません。
お客様が「そこはもう、決めでしかないから………でOK!」というこであればそのオーダーで制作を進めていくこと自体は難しいことではありません。
大切なことは、
「どの程度視聴者像を限定しておく必要があるのか」
であり、
「具体的な視聴者像を限定しておく必要があるのであれば、限定しておく」
ということです。
どこで(Where)みせるのか
動画を配信もしくは放映する場所がどこ(Where)なのかというのは、視聴者像との関連があるだけではなく動画クリエイティブそのものにも大きく影響します。
そのため、どこで動画を使うのかや、複数の場所で動画を流す場合にはそれぞれの放映・視聴環境の把握と「どこで動画を流すことが最も重要なのか」(優先順位)について決めておく必要があります。
例えば、ショッピングモールや駅などのサイネージで動画を流す場合には音が出せないことがよくあります。
また、サイネージのサイズによる影響も大きいです。
- 音が出ていない中で動画に注意を引く必要がある
- 音がなくても視聴者が情報をキャッチアップできる必要がある
- サイネージによって納品する動画の縦横比が変わるためサイネージのサイズや縦横比を確認しておく必要がある
などは要チェックのポイントです。
特に
- いつも仕事をしている場所とは異なる場所で動画を使う。
- いつも自分が使っているモノとは異なる機器で動画を放映する。
など、馴染みのない場所や環境で動画を配信する場合には注意が必要です。
どこで動画を活用するのかについては、予めシチュエーションや放映する機器、スクリーンなどについて情報を集めておきましょう。
動画制作会社へ期待する、1W1H
残りの1W1H(What,How)は動画制作会社の経験や実績、知見に期待したい部分です。
また、この部分でどのような提案をもらえるかで動画制作会社の経験や実績だけではなく動画制作会社の営業担当者の実力も推し量ることができるでしょう。
どんな(How)動画を制作するのか
例えば、1口にインタビュー映像と言ってもそのバリエーションは様々です。
照明を使ったより立体的/情緒的な雰囲気の動画
もあれば、
短いテンポでリズムよくつないでいく動画
もあります。
どんな(How)動画が良いのかについては、「特に重要な3W」をしっかりと伝えることができれば、そこから先は動画制作会社の腕の見せ所です。
なに(What)をみせるのか
ここで言う「What」とは、例えば商品プロモーションであれば「商品そのもの」であることもありますし、社員インタビュー動画であれば「社員」でもありますが、
それだけではなく、その商品や社員の「何ををみせるのか」ということです。
- 機能的に優れた何かなのか
- 商品コンセプトなのか
- 社員の魅力的な容姿なのか
- 社員が持っている熱い想いなのか
ここまでの説明だと、「これも自社で決めるべきでは…」と思う方も多くいると思いますが、筆者もそう考えています。
筆者が「What」において動画制作会社へ期待したいと考えているのは「What」について企業側の指定・希望があることは前提とした上で、
- 客観的に考えて、訴求したい「What」が本当に正しいのかどうか。
(それを訴求することが、「Why」への回答となり得るのか) - その訴求したい「何か」は動画で訴求することがベストなのかどうか。
(動画以外のクリエイティブの方が適している可能性はないのか)
という2点についてツッコミをいれてくれるかどうか、ということです。
前者については、企業担当者の方が圧倒的に詳しい領域について「馬鹿にされるかもしれない…」と思いながらも疑問に思ったことやわからないことをしっかりと質問できるかどうかというのが重要なポイントです。
私の経験上、その初歩的・根本的な「問い」が企業担当者が見落としていた「何か」に気づかせるきっかけとなるケースは少なくありません。
また、後者については動画を売りたい制作会社にとってはあまり考えたくない部分ですが、だからこそ本気で「動画がベストなのか」を考えている営業担当者であればその人を逃す手はありません。
その営業担当者ベストだと考える方法を確認すると共に、そのまま任せてしまうことも検討してみましょう。
きっと動画以外にも詳しい領域や良好なパートナー企業との繋がりを持っており、良い提案をしてくれるはずです。
最後に
別の記事で紹介したように、5W1Hでしっかりと情報を整理した上で動画制作会社へ声をかければ、複数の営業担当者に何度も同じ話をする必要はなくなり、問い合わせるという作業そのものも効率化することができます。
また、しっかりと情報整理ができていると動画制作会社に、
「この会社は本気で動画を制作しようとしている」
と認識してもらうことができます。
常に営業目標を追っている動画制作会社の営業にとって「お客様の本気度」は重要な指標である、ということは経験者として自信をもってお伝えすることができます。
営業担当者の中での高い優先順位を確保することは、より良い動画制作や制作進行においてポジティブに影響するでしょう。
ぜひ、まずは「情報を整理する」ことから動画制作の検討をスタートしてみて下さい。
下記に、情報整理に便利なヒアリングシートをご用意していいますので、ぜひご活用ください。
また、動画制作について相談したい…という方はこちらからどうぞ。