動画制作に関わらず、クリエイティブ制作の際に必要なのが「ヒアリングシート」です。
動画を制作することになった背景や目的、納期や予算などの「確定情報」を事前に取りまとめて置くことができると、制作会社への情報共有の工数を削減することができますし、制作過程においても様々な場面で活躍してくれます。
しっかりと準備することでスムーズな制作を実現しましょう。
よくあるFAQ
- 動画制作に最適なテンプレートはある?
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各社によって微妙にフォーマットがことなりますが、ヒアリングの際に聞きたい内容はほとんど共通しています。下記にフォーマットを用意しています。無料でダウンロードできるのでご活用ください。
https://video-case.com/download/hearing-sheet/ - 動画制作にヒアリングシートは必須?
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必須です。制作会社との情報共有や社内関係者との情報共有など各方面との共通認識を形成、獲得することで未然にトラブルを防ぐことができます。また、制作会社へ問い合わせる前にヒアリングシートを用意しておくことで各社への情報提供の手間を省くことも可能です。
- 動画制作のヒアリングシートに必要な項目は?
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動画制作の目的、視聴ターゲット、納期、予算、想定しているクリエイティブイメージ、視聴後に期待する心情やアクションなど様々です。上記のテンプレートに網羅しているので、ご参考下さい。
ヒアリングシートとは
動画制作の背景や目的なども含めて「その時点で確定している情報」をまとめたものを「ヒアリングシート」と呼びます。ヒアリングシートをどのタイミングで用意するのかや、どのような内容を記載するのか、そしてそのフォーマットなどは制作会社によって異なりますが、形式は問わず何らかの形で必ず用意されているはずです。
ヒアリングシートの内容は発注側にとっては、「発注内容」「納品条件」と言い換えることができますし、制作会社にとっては「受託内容」「納品仕様」と言い換えることができます。つまり、契約内容と言い換えることもできるでしょう。そう考えると、ヒアリングシートの有無やその内容が如何に重要であるかイメージしやすいのではないでしょうか。
また、それ以外の役割・機能も果たしえます。その役割・機能を紹介していきます。
ヒアリングシートに記載すべき内容
ヒアリングシート…なので、基本的にはシート内で聞かれたことに答える形でOKですが、ここでは「どのようなことを聞かれるのか」ということも踏まえて解説します。
- 動画を制作することになった背景・理由
- 対象となる、商材・サービスなど
- 動画制作の目的
- 動画に期待する役割
- 動画の視聴ターゲット
- 視聴前後のターゲットの心情・アクション
- 動画の配信場所
- 納品形態
- 予算
- 納期
…などの項目が挙げられます。一つずつ見ていきましょう。
動画を制作することになった背景・理由
どのようなことがきっかけで動画制作を検討することになったのか、という背景情報には動画制作会社にとって重要な情報が多く含まれているため、もしヒアリングシートにこのような項目が用意されている場合にはできる限り詳細を記入することを強くおすすめします。
動画制作を見当されるお客様の中には「動画を制作することは決定事項」「こういう動画が欲しい」というある種の既定路線が定まっているケースもあります。
もちろんそれが、すでに十分に議論・整理された情報・状況から導き出された答えであれば問題ありませんが、基本的にはそうではないケースがほとんどです。
そのため、どのような議論や状況から動画の制作を検討することになったのかを説明することで「そもそも動画が最適なのか」「動画であればどのような動画が良いのか」を第三者の視点を得ることができ、より本質的な議論につなげることができるようになります。
対象となる、商材・サービスなど
動画の対象が特定の商材・サービス等の場合、それがどのようなサービスなのかをできる限り詳細に記載しましょう。もちろん、制作会社側でリサーチも行いますが、事業者側で認識している商材・サービスの特徴と第三者の視点で得られる情報からの印象は必ずしも一致しません。
そのようなちょっとした違和感が、動画としてのあるべき姿の導出や、企画立案に大いに役立ちます。
動画制作の目的
ここで重要なのは「動画制作を通して達成したいゴール」と「そのゴールの達成に向けて動画が担うべき役割」は全く別であるということであり、「動画制作の目的」は前者を指しています。制作会社や担当者によって使われる言葉はまちまちですが、少なくとも「最終的なゴール」と「動画が担う役割」を分けて考えるということはぜひ頭の片隅においておいてください。
例えば、動画制作の目的が
・特定の商材の売上の向上
だとする場合、動画を制作するだけでそれを達成することは非常に困難です。では、なんのために動画を制作するのか。それは、その動画がその商材購入の何らかのハードルを超え、商材購入に繋がりやすくなるためです。
では、「ハードル」とは具体的にどのようなものが考えられるでしょうか。そして、それが「動画の役割」とどのようにつながるのか、下記で解説します。
動画に期待する役割
商材購入のハードルとして考えられるものとしては、例えば
- そもそも商材のことが知られていない
- 商材の特徴がわかりにくい
- 商材がもたらすベネフィットが伝わっていない
- 商材の利用が難しそう
- 商材の管理やメンテナンスが難しそう
…など様々なものが考えられます。
ここで気をつけるべきポイントとして、「動画の役割≠商材購入の最大のハードル」ということです。
目的達成に向けた、ハードルがどこなのかを突き止めることができれば、そのハードルを超えるために
- どのようなプロセス・アプローチが考えられるか
- そこで動画を活用するとしたら、どのような動画であるべきか
ここまで考えて初めて「動画の担うべき役割」が見えてきます。
ここまで例示したもので具体化してみると、
- 動画制作の目的→商材の売上向上
- 売上を上げるためのハードル→商材の利用が難しそうだと思われている
- 動画の役割→商材が簡単に利用できる、もしくは動画を見れば利用できそうだと思ってもらう
- 動画の内容→チュートリアル動画や、「簡単に利用できる」ことを想起させる広告など
簡単ではありますが、このような流れで考えると「動画制作の目的」と「動画が担うべき役割」が異なり、区別して考えるべきであることが理解できます。
動画の視聴ターゲット
ここでも先ほどの「目的」と「役割」と同様に「商材のターゲット」と「視聴ターゲット」は分けて考える必要があります。
例えば商材のターゲットが20−30代の女性だとして、動画広告を配信することにする場合に
・特によく購入してくれているのは30代だから30代をターゲットにする
・20代にももっと購入してほしいから20代をターゲットにする
・もっと上の年代にも購入してほしいから40代をターゲットにする
などのケースは十分に考えられます。この例はわかりやすくするためのものなので、実際にはもっと複雑ですが、いずれにしても「自分たちがターゲットとしている層」と「動画の視聴ターゲット」は必ずしも一致しない・分けて考える必要がある、ということは理解しておいた方が良いポイントです。
視聴前後のターゲットの心情・アクション
動画を視聴する前に、ターゲットは何を思っているのか。そんなターゲットが動画を視聴することでどのような心情になり、行動に移ることを期待するのか。
これはあくまでも想定と期待という少し曖昧なものになりますが、それでも関係者の間での共通認識として明確にしておく必要があります。そして、企画を立案する上でもキーとなるポイントです。
動画の配信場所
動画をどこで使うのか、観てもらうのかも非常に重要なポイントです。基本的にはここまで整理してきた情報から導き出されるものでもありますが、場合によっては「すでに場所が決まっている」ケースもあります。
例えば、「式典のオープニング」「採用イベントでの会社説明」などです。
配信場所は動画の企画や演出に影響するのはもちろん、納品形式やその他の仕様にも関わる部分なので入念なチェックが必要です。
納品形態
最近はそのほとんどがmp4などのデータ形式での納品ですが、上記の配信場所によっては別のデータ形式が指定されたり、機材トラブルなどに備えてBlue-rayディスク/DVDなどでの納品が必要なケース、TVCM等の場合にはテープ納品などもあります。
基本的には制作会社側から事前に確認が入る項目ではありますが、せっかく制作・納品された動画が土壇場で使えないと言う状況を避けるためにもしっかりと確認しておく必要があります。
予算
予算をどのタイミングで制作会社に伝えるかというのは発注側としては悩みどころかもしれませんが、筆者としては最初にオープンにしてしまうのがベストであると考えます。
また、例えば予算が200万である場合、
- 200万の中でできるベストな提案と見積もりが欲しい
- 300万あればできることも提案してほしい
- 150万ででできることも提案して欲しい
など、より具体的に希望を伝えることをおすすめします。
理由としては、「予算200万」とだけ伝えた場合、各社から上記のような様々な提案が出てきてしまい、純粋な比較検討が難しくなるためです。
この点につていは、下記の記事にもまとめているのでよろしければご参考ください。
納期
動画を使うタイミングから逆算して、完成物を納品してもらうタイミングを明確に伝えましょう。
例えば、広告として出稿する場合には媒体側での審査が入り、場合によっては修正が必要になります。また、社内のコンプライアンスチェックや、医療系・飲食系の場合には薬事・薬機チェックなどが入るケース、チェックが2回必要なケースなど動画の用途や会社によって「納品された動画にOKが出る」までのプロセスは様々です。
一度伝えた納期を前倒ししようとすると、想定外の費用が発生してしまうため、この点もやはり事前の入念なチェックが必要です。
ヒアリングシートの役割と機能
ヒアリングシートの役割は「共通認識の形成・獲得」と「情報共有」の大きく2つでです。いづれも社内外の関係者と、抜けもれなく共有しておく必要があります。
また、
- 制作会社に問い合わせる前
- 問い合わせ〜発注まで
- 発注後
で、果たす役割も異なります。
基本的な内容ですが、それ故に重要な一方で見落としてしまったりなど軽視されがちな部分でもあるので事前にしっかりと確認しておきましょう。
「制作会社に問い合わせる前」の役割と機能
社内関係者との情報共有
ヒアリングシートというと「制作会社と情報を共有するためのもの」というイメージがあるかと思いますが、制作会社との情報共有の前にまずは、社内関係者との情報共有ために必要であるというのが筆者の考えです。もちろん制作会社へ問い合わせる前に一定の共通認識の形成・共有は完了していることも多いですが、「はっきりしていない」項目の方が圧倒的に多いです。
もちろん、動画制作が初めての場合には「そもそもなにを決めれば良いのかわからない」という項目もあると思いますが、「動画制作の背景」「目的」「ターゲット」「予算」「納期」などの基本的な情報は打ち合わせ前に決めておくことができるはずです。
例えば、下記の様な項目については制作会社との打ち合わせの前に社内で確定しておいてほしい情報です。
- 動画を制作することになった背景
- 動画制作の目的や動画に期待する役割
- 動画の視聴ターゲット
- 動画の配信場所
- 予算
- 納期
この記事の最後に、上記の項目も含めたヒアリングシートのテンプレートを用意しているので、ぜひご活用ください。
制作会社との打ち合わせの工数削減
制作会社に問い合わせる際、おそらく多くの企業担当者の方は複数の会社に問い合わせることになると思います。
その際に、
- いちいち問い合わせフォームに同じ内容を記載する
- 複数の会社に同じようなことを何度も伝える
というのは全く生産性の無い無駄な時間です。
事前にヒアリングシートを用意できていれば、各社に送るだけで問い合わせは完結できますし、打ち合わせの際もそれを前提としたより生産性の高い会話が可能です。また、能力の高い営業担当者であればヒアリングシートの内容をもとにより本質的な質問や事前の提案などの準備をしているはずなので、早い段階での制作会社の見極めも可能になります。
「とりあえず制作会社の話を聞こう…」となってしまいがちだとは思いますが、少し時間を確保して用意するだけでそのあとの工程がとても楽になるので、ぜひ事前の準備をしてみて下さい。
「問い合わせ〜発注まで」の役割と機能
制作会社との打ち合わせ後のアップデート
制作会社との打ち合わせの中でで改めて確認すべき内容や、社内で共通認識を形成した情報を再度調整する必要が発生します。例えば「思ったより製作期間が長くなりそう」「予算が足りなそう」「イメージしていたクリエイティブで目的の達成が難しそう…」など。
ただし、これ自体は全く問題なく、むしろポジティブな状況です。
事前にしっかりと情報が整理されていることで、制作会社としてはより動画制作における「本質」に近い部分のヒアリングが可能になったからこその状態である言えます。
そして、制作会社との打ち合わせの中で発生した「確認項目」「調整項目」などをヒアリングシートに反映し、それをもとに改めて「社内での確認調整を行って頂く→制作会社に共有する」という作業を繰り返すことで精度を上げていくことがとても重要なです。
抜け漏れを防ぐという意味でもとても有用ですので、ぜひご参考下さい。
「発注後」の役割と機能
「確定情報の格納場所」としての役割
ここまでの説明で、ヒアリングシートの重要性の一端はご理解いただけたかと思います。しかし、筆者が最も重要だと考えるのは「制作過程における共通認識の確認のための資料」としての機能です。動画制作は短いもので1ヶ月、長いものだと3〜4ヶ月程度の時間が必要なプロジェクトです。
それだけの期間に発注者側はもちろん、制作会社側も複数のプロジェクトやその他の仕事を同時並行で行っているため、「このプロジェクトの目的ってどこだったっけ?」「納期いつだっけ?」のような根本的な情報ですら記憶が曖昧になってしまうことは多々あります。また、それが発注者側と制作会社側の間でのズレとなり、コミュニケーションロスを起こしてしまうというのは、ままあることです。
また、「あの電話で伝えた」「あの日メール(チャットツール)で送った」などの内容を「後で反映しよう」と思っているうちに抜けてしまっている…なんていうことも少なく有りません。
このような、余計なトラブルを防ぐためにも「プロジェクトに関して、アップデートした情報や確定した情報やこのシートに反映し、随時共有・確認を行う」というルールを事前に定め、発注者・制作会社の双方が密に連携することが重要です。
補足:PPM資料
本記事で想定している読者や動画制作案件においては、かなり少数だと考えていますが一定の予算規模や制作内容によっては「PPM」(=Pre Poduction Meeting)という撮影前に関係者を集めて行われる「撮影前の最終確認のためのMTG」で用いられる資料をもって撮影内容を確定します。そして、その資料の完成をもって発注側と制作側の共通認識として確定させるというのが一般的です。
ただし、PPMが実施される・PPM資料が用意されるような案件は少なくとも300万以上の予算でキャスティングや衣装、スタジオやロケーションが必要な案件であることが多く、この記事で想定している読者・案件とはターゲットが異なるため、あえて通常であればPPM資料が担うような役割を「ヒアリングシート」の役割として記載しています。
情報整理におすすめの記事
ここまでヒアリングシートの活用方法についてまとめましたので、「情報整理」という点で共通する記事をご紹介します。動画だけではなく、Web制作などのクリエイティブ制作には共通する項目も多いのでぜひご参考下さい。
最後に
簡単に「ヒアリングシート」と言っても、その果たしうる役割や効果は使い方次第でかなり大きくなります。
事前情報からしっかりと活用して頂き、よりスムーズで楽しい制作プロジェクトを実現してみて下さい。
情報整理や予算の検討などの事前準備がご不安な方は筆者がお手伝いいたします。
是非、下のボタンからお気軽にお問い合わせください。