動画制作を会社に依頼する時代は終わる?動画業界のこれまでとこれから

2023年に登場したchatGPT-4の驚異的な情報収集・編集能力の高さから、改めて多くの仕事が近い将来AIに置き換わるのではないか?と大きな話題になりました。

また、「AIは単純作業は得意だけど、アートやクリエイティブは苦手分野だよね」というのが数年前までの共通認識でしたが、それもMidjourneyを始めとしたAIによる画像生成ツールなどの登場によって「実はクリエイティブもAIに早々に置き換わるのでは?」と認識が変わり始めています。

本記事では、筆者が動画制作会社に就職した10年ほど前からこれまでにどのような変遷を辿ってきたのか。そして、AIなどの登場によって今後どのように変わっていくのかについて考察していきます。

本記事の内容は、筆者の個人的な視点と考えに基づくもので、客観的なデータなどをもとにしたものではないので、その点をご理解頂いた上でお読み頂けると嬉しいです。

目次

動画制作会社のこれまで

一昔前の動画制作会社の状況

一昔前…というのは、ざっくり10年以上前のことだと思って頂きたいののと、あくまでも聞きかじった情報なので、確かな情報ではないです。

一昔前の動画制作会社は、「もともと動画制作会社でクリエイターとして働いていた人」が実力と実績、そしてお客さんを引っ提げて独立することが多かったそうです。

そのため、それまでのつながりや紹介などで案件を獲得することが多く、いわゆる「新規営業」を行うことはあまりなかったとか。

このような背景と時流が相まって「新規営業を行う」という当たり前といえば当たり前のことをやることで一定の顧客を獲得できる、ボーナスステージのような時代がやってくることになります。

10年ほど前の動画制作会社の動き

筆者が動画制作に携わり始めたのが、10年ほど前の2012年の夏のことでした。まだ学生だったのですがインターンとしてまだ立ち上がったばかりの制作会社にジョインしたことがきっかけでした。

その会社は、

  • 社長が広告代理店や動画制作会社の出身ではない
  • 動画クリエイターが在籍していない

という、当時は非常に珍しいタイプの動画制作会社でした。

動画制作を生業としているものの、いわゆる「クリエイター」は在籍していないため、営業と制作進行管理を行い、カメラマンやディレクターなどの「クリエイター」はいわゆるフリーランスクリエイターをネットワークする形でビジネスを行っていました。

また、そのような会社のため、いわゆる「つながり」で獲得できる案件は当然皆無で、一昔前の動画制作会社とは異なり、動画制作会社が自ら営業活動を積極的に行うというスタイルでした。

更に新規営業へ注力しただけではなく、

  • デジタルマーケティング・SEOに取り組む制作会社は少なかった
  • 徐々に「検索して外注先を探す」というアクションが浸透し始めていた
  • 動画制作に必要な機材が少しずつ手に入りやすくなっていた
  • 企業がYoutubeを活用しはじめたり、LPやHPなどに掲載するなど動画のニーズが増え始めていた

…などの外部環境もあり、筆者が在籍していた会社はかなりのスピードで成長していました。

5〜8年ほど前の動画制作会社の動き

時流と新規営業・SEO対策などの施策が上手くハマり、順調に成長していたのですが当然ながら徐々に同じようなビジネスモデルで事業を行う動画制作会社が増えてきます。

このあたりから、動画制作のニーズと新しく立ち上がる動画制作会社が爆発的に増えました。(あくまでも印象ですが)

当然といえば当然で、動画制作はいわゆる「受託モデル」で参入障壁は低く、またクラウドソーシングも徐々に浸透していたこともあり動画クリエイターの確保も一昔前よりははるかに簡単になりました。

つまり、新規営業で案件を獲得することさえできればビジネスとして成立させられる環境が整ったのです。

ここ5年の動画制作会社の動き

既存プレイヤーの動き

上記の通り、ビジネスを興す環境が整ったこともありかなり多くの動画制作会社が立ち上がりました。

そして、既存のプレイヤーの動きも変わり始めました。

動画制作会社はざっくり、

  • 数十万円〜300万円くらい
  • 500万円〜1000万円くらい
  • 800万円〜

という感じで、制作規模(制作予算)でプレイヤーが別れています。

ここ最近で増えてきている制作会社が主戦場としているのは、①の領域。

従来の制作会社が主戦場としているのが②の領域。そして、③は広告代理店やその直下で制作を受託している会社の領域というイメージです。

もちろん、キレイにわかれているわけではないのですが、筆者が①と③の会社で仕事に従事した経験から「ざっくり」区分しています。

「既存のプレイヤーの動きが変わっている」というのは、これまでなんとなく①〜③のように区分されていた領域がかなりグラデーションになってきているということです。

①を主戦場としていたプレイヤーは一定の規模・売上になってくると、より成長を志向してより規模の大きな案件を獲得しに行き、③を主戦場としていたプレイヤーはこれまで取りこぼしていた①の領域の案件も狙うようになってきました。

もちろん、それぞれの領域で営業やプロジェクト進行のノウハウは異なるので簡単ではないのですが、新興プレイヤーの増加だけではなく、既存プレイヤーとの競争も激化し始めているというのが、直近の動画制作界隈の動きです。

新興プレイヤーの動き

参入障壁が低く、動画クリエイターの確保も比較的容易になったことで、新興プレイヤーが増えたことは先述の通りなのですがその中での傾向としては、

  • コンテンツマーケティングに注力する動き

が出てきているということです。

caseというメディアをリリースした2018年頃にはまだ「動画制作」に特化したメディア・情報というのは少なかったのですが、ここ2〜3年でかなり増えてきています。

この背景としては、

  • 制作会社としてはより広く浅く、検索ニーズを拾いたい
  • 制作会社にナーチャリング〜商談化といういわゆるSaaS営業的な手法が浸透してきている
  • 動画制作ニーズが引き続き増加傾向にある

という要素があると考えています。

動画制作会社のこれから

動画制作業界は、成熟しつつある気がする

あくまでも筆者の個人的な考えですが、動画制作会社は成熟しつつあって業界としては、よほどの技術革新が起きるまでは大きく変化しないのではないかと思っています。

そう考える理由は大きく2つで、1つは動画制作はビジネスモデルとしては「受託制作」という非常にシンプルなモデルで、「受発注を仕組みで簡潔にする」みたいな業界構造を変えるようなイノベーションは起きにくいということ。

2つ目は、動画制作会社としてそれまで業界経験のないプレイヤーでも参入しやすくになったことで「制作会社」の粒感は最小単位に近いとこまで来たのではないかということ。

いわゆるクラウドソーシングのように企業が個人に直接発注するというケースももちろん増えていくとは思いますが、それは恐らく比較的安価な案件に限られてくるでしょう。

それは、

  • すでに企業が外注することなく動画制作を行うことができる環境自体は整っている
  • 一定以上の予算規模になると、リスクを避けたい発注企業は個人ではなく「法人」への発注を優先する

このような、環境と企業側の思惑を鑑みると少なくとも動画制作を受託する組織としてはすでに最小単位に近い状態になっていると思うのです。

まとめると、

  • 動画制作はビジネスモデルとしては、受託制作というこれ以上無い非常にシンプルなモデル
  • 広告代理店〜フリーランスまで、企業の外注先の選択肢は出揃った
  • 企業→個人への外注は数は増えるだろうが、予算規模は限られる

このような状況なので、ここから業界構造が大きく変わるとすると技術革新くらいしかないのかなというのが個人的な考えです。

AIなどのテクノロジーによって動画制作会社はどうなるのか?

AIが動画を編集してくれるソフト、AIがCGを生成するソフト、プログラム通りに動くドローン、モーションキャプチャーなど動画に関連する様々なテクノロジーが出てきていますが、これらによって動画制作会社はどのように変わるのでしょうか。

結論として、筆者は「『動画制作会社』がなくなることはしばらくはない」と考えています。

動画制作に関連する様々な作業が自動化・効率化されることで、「社内で制作する」「個人へ発注できるくらい安価に制作できる領域が広がる」などの変化は予想できます。

また、AIによる画像生成のように動画も「生成」する時代が近い将来やってくるでしょう。

しかし、生成されたクリエイティブが増えれば増えるほど「動画」であることの価値は本質に回帰するのではないかなと思うのです。「動画」であることの価値の本質とは?という議論は長くなりそうなので辞めておきますが、

その一つとして、

「本物(人・モノ・場所)が出ていて、動いて、音がするという圧倒的なリアル」

というのがあると思っています。

そしてその「リアル」が価値の一つであるとすれば、少なくとも「本物がでていて、それを人が撮影する」世界が当たり前であるうちは「動画制作会社」はあり続けるだろうなと考えます。

それは、動画制作における動画制作会社の提供価値は動画クリエイティブそのものだけではなく、「制作プロジェクトを管理・進行する」ことでもあるからです。

動画制作に一定数の人が関わる以上は、それを管理するという仕事は残り続け、それ故に「動画制作会社」がなくなるということは、しばらく無いだろうなと思うわけです。

動画制作を会社に依頼する時代は終わらない

…ということで、改めてこの記事のタイトルで提起している「動画制作を会社に依頼する時代は終わる?」という疑問なのですが、あくまでも筆者の個人的な考えですが、「動画制作を会社に依頼する時代は終わらない」というのが結論です。

先述の通り、ビジネスモデルや業界構造が大きく変わる可能性が低いとすると、個々の動画制作会社はその中でいかに生き残るのかという戦いをするのだろうなと考えています。

じゃあcaseは・加藤は「どう戦うのか?」というと、そのあたりはnoteの方にまとめているので、もし興味がある方は御覧ください。

とりとめのない記事になりましたが、最後まで読んでいただきありがとうございました。

もし少しでも「いいな」と思って頂けましたらぜひお問い合わせください。一緒に楽しい動画制作を実現しましょう!

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この記事を書いた人

【株式会社case 代表取締役/動画制作プロデューサー】加藤智史
新卒で入社した動画制作会社で広告・マーケティング・採用・人材研修など約400本の動画制作に携わる。その後、TVCMなどの制作を行う、大手制作会社にアカウントエグゼクティブとしてジョイン。数千万円規模のプロモーション案件に携わり、動画にとどまらないクリエイティブ制作やプロジェクトマネジメントを経験。現在は本メディアの運営を通じた企業の動画制作支援や、動画制作会社の営業支援などを行う。動画制作のご依頼の流れはコチラ

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