採用担当者にとって、採用活動の中で「学生から具体的な仕事の内容を聞かれる」というのはよくあることでしょう。実際に筆者も大企業から中小企業まで様々な企業の採用担当者の方とお会いしましたが、お悩みとして特に多いのがこの「仕事の具体的な内容」をどう説明するか?あるいは、どのように伝えると理解してもらえるか?ということでした。
採用担当者の方がどんなに苦心して一生懸命言葉で説明したとしても実際に働いたことのない学生の想像力には限界があります。しかし、だからといって諦められる問題ではありませんよね。
本記事ではそんな「仕事理解」の最強兵器とも言える仕事紹介動画の活用と制作のポイントについてご説明します。
仕事紹介動画についてよくあるQ&A
- 新卒採用における仕事紹介動画とはどのようなものですか?
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採用活用で使われる仕事紹介動画の多くは「特定の職種の特定の人物」に密着してその方の仕事の様子を伝える物が多いですが、「インタビュー+仕事している様子のインサート」のようなシンプルな構成のものもあります。
- 仕事紹介動画の制作費はどれくらいですか?
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撮影日数などによって変動しますが、100万円〜とお考え下さい。
- 仕事紹介動画の制作期間はどれくらいですか?
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撮影まで1ヶ月、撮影後1ヶ月の合計2ヶ月程度を想定すると無理のないスケジュールです。
仕事紹介動画とは
仕事紹介動画は、明確な定義がなされているわけではなく、企業や制作会社によってもその解釈・イメージはバラバラです。筆者なりに簡単に分類すると、
- ドキュメンタリー(っぽい)動画のように、特定の人物に密着して仕事の内容・やり甲斐などを伝えるスタイル
- インタビュー+仕事の様子のインサート、という比較的シンプルな構成で仕事内容を説明しているもの
…の大きく2つに分かれます。
ドキュメンタリー動画形式の仕事紹介動画について
前者の動画は有名なTV番組で例えると「情熱大陸」や「プロフェッショナル仕事の流儀」のような動画です。
TV番組のドキュメンタリーは2〜3ヶ月、長いものだと半年や1年以上の間密着して取材を行っていたりするので、それをそのまま採用動画の制作に当てはめてしまうのは現実的ではないです。
出演していただく社員の方に長期間密着することはできませんし、制作費もかなり高くなってしまいます。
しかし、だからといって全くもって手が出ないということはありません。
制作期間や制作体制などを予算にあわせてアレンジできれば採用活動に使えるドキュメンタリー動画の制作が可能です。
インタビューメインの仕事紹介動画について
ドキュメンタリー形式のものと比較すると、制作費を抑えやすいです。また、出演者としてもメインとなる方が1名だけいれば成立させることも可能なので、制作自体のハードルもドキュメンタリー形式の動画と比較すると低いと言えます。
ただし、「仕事の内容の理解を促す」という動画の目的を考えると、ドキュメンタリー形式の動画の方がベターではあるので、まずは「ドキュメンタリー形式」での仕事紹介動画の制作を検討してみることをおすすめします。
新卒採用における「仕事紹介動画」の有用性
考えられる有用性はたくさんあるのですが、代表的なものは下記でしょう。
- リアル(っぽい)仕事の様子を見せることができる
- (リアル(っぽい)仕事の様子を見せるため)インタビューに説得力が出る。
- 故に、失敗したエピソードなどで仕事の厳しい側面にもよりリアリティが出る。
- クライアントや上司にもインタビューできると、やり甲斐や求められるスタンスなどにも触れられる
身も蓋もない言い方をしてしまえば、「具体的な仕事の内容を理解する」というのは採用担当者がどれほど努力をしたところで100%それを達成することは難しいでしょう。
しかし、大切なことは学生が「具体的に理解できた、イメージできた」と感じ、納得することです。
その意味で、仕事紹介動画は非常に有用です。
ドキュメンタリー形式の仕事紹介動画であれば、普段は見ることのできないリアルな仕事の様子やクライアントや上司との関係性を切り取ることで、学生は自分をそこに自己投影することができます。「自分にできるのかどうか」というセルフスクリーニングを促し「こういう仕事がしたい!」という志望度の向上につなげるクリエイティブツールとしてはベストだと言えるでしょう。
また、インタビューメインの構成だったとしても実際の業務シーンをインサートとして活用することで、「イメージ」を具体化することは可能です。
過去の筆者が担当していたとあるクライアントは、毎年必ずドキュメンタリー形式の仕事紹介動画を制作されていました。
仕事紹介動画は1年で内容が古くなることは少ないので2〜3年は使われる企業が多いにも関わらずです。
その理由として、
- 動画を見せる前後での、学生の「前のめり感」が大きく異ること
- その企業の事業モデル上、「トレンド」が重要であること
を挙げられていました。
動画を通して、仕事への理解度・解像度があがることで面接時の受け答えや質問の精度があがる。
そして、「トレンド」が重要であるため動画への出演者やその方の服装、出演頂くクライアントなども含めて(コーディネートすることでよりその精度は上がっていくことを感じられていたそうです。
仕事紹介動画の制作費用
下の記事でもご紹介ている通り動画の制作費用は制作会社や制作体制、企画などによって大きく異なるためなんとも言えないのですが、
私が携わってきた採用向けの仕事紹介動画の予算は100〜200万円ほどのものが多かったです。
私が以前所属していた会社は、クライアントから直接発注をもらって制作させて頂くことが多かったので、代理店が間に入る場合は当然マージンが発生する分、2〜3割ほど高くなると想定した方がよいでしょう。
採用クリエイティブに関して言えば、よほど信頼できる代理店でなければ少なくともクリエイティブ制作については直接発注することをおすすめします。代理店を経由することで、採用担当の方の工数が少なくなるかというと、そうではないケースの方が多いため、あまり代理店を経由する意味がありません。
理由としては
・結果的に採用担当者が自分で手配する領域が多い
・クリエイティブチェックについてはかならず採用担当者が行う
など、代理店経由で発注しても発注元の工数があまり変わらずコストパフォーマンスが悪くなりがちだからです。
ただし、代理店の担当者があなたやあなたの会社の特性や好み、事業内容などを熟知していて信頼のおけるパートナーである場合は別です。代理店さんにある程度委ねてしまったほうが楽で、かつクオリティも上がるでしょう。
仕事紹介動画の制作期間
採用活動でも使える、ある程度現実的な予算で制作可能な仕事紹介動画の制作期間がどれくらい必要なのか、というのは気になるところですよね。
率直にお伝えすると、制作期間は予算や企画と紐づく部分があるのでなんとも言えないのですが制作会社としてはぜひ納期の2〜3ヶ月前には声をかけてほしいところです。
「結構時間かかるな…」
とお思いの方もいると思いますが、結構時間かかります。
例えば、あなたが自社の採用活動で使用する仕事動画を制作することになった場合、
- 誰に出てもらうのか?
- その許可はだれにもらうのか?
- どこで撮影するのか?
- 撮影場所の撮影許可は必要なのか?
- 出演者は何人必要なのか?
- 取材対象者の上司にも出てほしい
- お客さんにも出てもらえないか?
…などなど、特に採用動画の場合は当然ながら自社の社員やオフィスを撮影することが圧倒的に多いため、採用担当者の方が手配しなければならないケースが多いです。
上記の諸々の段取りを踏んだ上で、実際に社員の方を撮影するのは1〜2日に抑える、というのが採用活動で使われる仕事紹介動画の制作の裏側です。
撮影から納品までが、社内でのチェック期間も含めて1ヶ月程度かかることもあるので、それに撮影までの準備期間と、どのような企画にするのかということを検討する期間も含めて1〜2ヶ月は必要になります。
そのため、もし仕事紹介動画を制作したい!という場合には早めに制作会社へ相談することをおすすめします。
新卒採用向け仕事紹介動画の制作のポイント
新卒採用向けの仕事紹介動画制作において、特に気をつけなければならないのは下記の4点です。
- 目的を明確にする
- ターゲットを明確にする
- メッセージの伝え方に注意する
- 明確なコール・トゥ・アクションを設定する
あらゆる動画制作について、同じことが言えるのですが新卒採用での仕事紹介動画の活用については、特に動画に慣れ親しんでいる「動画ネイティブ」な世代であることを考えるとより慎重に検討する必要があります。
具体的にどのようなポイントを抑えるべきか、1つずつ解説します。
目的を明確にする
すごく当たり前のことなのですが、意外と見落とされがちです。
「なんとなくカッコいい動画」「とりあえずインタビュー動画を制作しようと思ってます」とかだと、あまり意味のない動画が出来上がってしまいます。本当にもったいないです。
ちなみに、ここでいう「目的」は「エントリー数を増やす」とか「歩留まりを上げる」くらいの解像度だと動画クリエイティブに落とし込むには少し抽象的です。
しっかりと役割を果たすことが期待できる動画を制作するためには、上記の「目的」に2〜3回ほど「WHY」をぶつけてみて下さい。
- なぜ歩留まりが低いのか?→面接での印象が良くない?会社や仕事の説明が分かりづらい?
- なぜ会社や仕事の説明が理解されないのか?→説明の仕方が悪い?内容が複雑でわかりにくい?
という感じで、ある程度のところまで深ぼり、要素分解しながら「動画の目的」を明確にしましょう。
ターゲットを明確にする
すごくすごく当たり前のことですが、これも見落とされがち…というか動画を制作するにあたっては少し解像度が荒い状態であることが多いです。
例えば、採用ターゲットは「MARCH卒で体育会に所属していたような学生」だとして、動画のターゲットもそのままでよいのか?もう少し絞ったほうがいいのか?あるいは、広げたほうがいいのか?という部分を検討しきれていないケースがあります。
- 採用ターゲットは「MARCH卒で体育会に所属していたような学生」
- 動画を制作するのは、〇〇〇〇という目的で、動画には〇〇〇〇という役割を担わせたい。
- そうすると、動画のターゲットは「MARCH卒で体育会に所属していたような学生」かつ「どちらかというと、〇〇〇〇タイプ」というように絞り込まれるのか「中学高校くらいから大学を卒業するまでなにかに打ち込んだ経験のある学生」というように少し広げるのか。
…という感じです。
新卒採用においても、ナビサイト上で検索条件で絞り込みという意味でのターゲットと、面接で絞り込む際のターゲットはそれぞれ解像度が異なるはずです。
前述の「目的」と紐づくため、ターゲットのことだけを考えても答えはでません。もしこの記事を読んで「あ…」と思った方は目的と合わせてどのようなアプローチが最適であるかについて、もう一度考えてみてはいかがでしょうか。
明確なコール・トゥ・アクションを設定する
「行動喚起」と訳され、デジタルマーケティングの世界ではユーザーに「次に起こしてほしい行動」を誘導することを指します。
つまり、動画を視聴したあとの行動としてどのような行動を期待するのか、そしてそのためにどのような気持ち・感情になって貰う必要があるのかを明確にしましょう、ということです。
当然ですが、やはりこの点についても目的との紐づきがあり、目的の解像度が低いとターゲットやコール・トゥ・アクションも同じように解像度が低い可能性が高いです。
もし、動画制作を具体的に検討しているようでしたら、まずはこれらのポイントを整理することから始めてみましょう。
新卒採用向け仕事紹介動画事例
採用向けの仕事紹介動画は、お客さんが出演していたり内容がかなり踏み込んだものになったりするケースが多いこともありあまりネット上で公開されていないのですが、いくつかピックアップしてみましたのでぜひ御覧ください。
ドキュメンタリー形式の仕事紹介動画
【採用】社員1日密着ドキュメンタリー “10年目グローバルマーケティング 中川さん編”
こちらの動画はYoutubeに公開されている採用動画としては長めの10分超の尺になっています。ドキュメンタリーというよりはインタビュー+ワークシーンのインサートという形ですが、かなり具体的な業務内容にも触れていてわかりやすい動画です。
こちらのFUJI株式会社さんの動画のほうが「ドキュメンタリー感」はかなり強いですね。
【採用】社員1日密着ドキュメンタリー”海外営業・渡邉さん編” | 株式会社FUJI
インタビューメインの仕事紹介動画
すかいらーく 新卒採用 マネジャーのしごと紹介ムービー 『マーケティング編』
ファミリーレストランにおける「マネージャー」職の全般的な内容をつたえつつ、こちらの女性は主に「マーケティング能力」にフォーカスしたインタビューがなされています。具体的にどのような能力・スキルが求められるかを伝えることで、一般的なイメージとは異なる面を説明しつつ、魅力的な仕事紹介動画になっています。
【採用インタビュー】ゲーム会社のお仕事/デザイナー編【職種紹介動画】
ゲーム制作における「デザイナー」という仕事について、同じ職種の複数のメンバーをインタビューすることで、多角的・立体的に「デザイナー」という仕事を紹介しています。とても自然体なインタビューになっていおり、デザイナーというクリエイティブな仕事のイメージを壊さないことを強く意識されているのが印象的です。
最後に
採用系のクリエイティブの中でも仕事の内容を紹介する仕事動画は毎年かなりニーズが高く、私が担当していたお客様の中には毎年制作される会社もありました。
しっかりと学生さんのことを理解し、制作会社と企画の内容を詰めることができればドキュメンタリー動画はそれくらい有用性の高いものになります。
少なくとも100万円くらいの予算があれば仕事紹介動画を制作すること自体は可能ですので、今回ご紹介した内容をぜひご参考頂き、検討してみてはいかがでしょうか。
動画制作について相談したい…という方はこちらからどうぞ。