動画制作に関わらず、発注企業が制作会社やシステム開発会社に提案を依頼する際に用意されるのが「提案依頼書」です。
RFP(Request For Proposal)と呼ばれることもあり、各社からの提案内容や見積金額の前提となる情報が含まれるため、発注側の企業にとっても制作会社側にとっても非常に重要な資料となります。
しかし、実際に動画制作会社へ声をかける際に提案依頼書(RFP)が用意されていることは少なく、発注側の企業は制作会社からのヒアリングに答える形でそれぞれの制作会社へ情報を提供しており、提案や見積りに必要な情報の精度は制作会社側の営業担当者の力量によってバラバラになっているというのが現状です。
本記事では、そんな提案依頼書の重要性や活用のポイントについて解説します。
提案依頼書(RFP)についてよくあるQ&A
- 動画制作の提案依頼書(RFP)とはなんですか?
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提案依頼書はRFPと呼ばれることもありますが、RFPはRequest For Proposalの略であり、外注候補の企業へ企画提案や見積りを依頼する際の要件が記載されたドキュメントのことを指します。
- 動画制作の提案依頼書(RFP)に必要な項目は?
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制作する内容によって異なりますが、「動画制作の目的」「動画に期待する役割」「視聴者に期待する心情やネクストアクション」「納期」「予算」「提案書に盛り込んでほしい内容(must/want)」「制作スケジュール」などは必須です。
- 動画制作の提案依頼書のフォーマットはある?
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word形式のフォーマットでご用意していますので、必要な方は下記よりDLください。
https://video-case.com/download/rfp-template/
提案依頼書(RFP)は必要なのか?
提案依頼書(RFP)は動画制作の提案や見積りを依頼する際に、「必要なのか」と問われると答えはNOです。
提案依頼書(RFP)が無くても動画制作会社からの提案や見積りを募ることは可能です。
しかし、一定の予算(筆者の経験上200万)を超える場合には「あったほうがいい」と断言できます。
そもそも、動画制作会社へ提案や見積りを依頼するということは、「なぜ今回動画を制作するのか?」ということを必ず社内や上司との間でなんらかの会話や共通認識の形成が行われているはずです。
提案依頼書(RFP)はその「共通認識」と「その他の必要な情報」をアウトプットしたものであるため、その情報をドキュメントという形に起こすか、関係者間の「共通認識」としてふわふわと漂わせて置くのかの違いでしかありません。
…であれば、後々の社内的な共通認識の齟齬を防ぐためにも少なくとも社内用のドキュメントは用意しておいたほうがよく、提案依頼書(RFP)はそれを社外向けにアレンジしてしまえばよいだけなので用意しない理由は無いのではないでしょうか。
もちろん、作り込もうとすると少々手間がかかるかと思いますが、情報整理のコツについては下記にまとめていますので、もしよろしければご参考ください。
提案依頼書(RFP)を用意するメリット
提案依頼書(RFP)が必要でないのであれば、敢えて手間をかけて用意したくないな…とお考えの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
確かに、「必須でなければ…」というのは理解できますが、それでもやはり「絶対にあったほうがいい」ので提案依頼書(RFP)を用意するメリットをご紹介します。
提案依頼書(RFP)を用意するメリットは大きく3つです。
- 社内の「共通認識」の可視化
- 外注候補企業への情報提供が簡単
- 提案・見積りの精度の向上
1つずつ解説します。
1.社内の「共通認識」の可視化
先述の通りですが、この記事を読んでいる方が制作予算の決裁権とアウトプットへの責任を持っている方でなければ必ず予定している動画制作について社内の関係者や上司などと何らかの共通認識のもとで制作会社を探しているはずです。
それが、業務中の打ち合わせなどの改まった場で決まったことであれば議事録などのドキュメントがその役割を果たすでしょう。
しかし、それだけでは不十分である可能性が高いです。
社内での打ち合わせの結果としての議事録にはこのような議論の内容や背景などが割愛され、端的な結論やネクストアクションが記載されるケースが多いためです。
例えば、動画制作の目的が「新卒採用のために、学生に仕事内容の理解を促すこと」だとします。
説明会などで集めたアンケートの結果「もっと具体的な仕事内容を理解したい」という声が多くあったため、動画で見せることでそのニーズに応えたい、という背景があったと想定すると、動画制作を検討するというのはもっともな結論です。
しかし、それをそのまま提案依頼書に記載してしまうと、制作会社としては下記の様な疑問が湧いてきます。
- 新卒採用における課題は学生の仕事内容の理解が進まないことなのか?
→本当は仕事内容についての説明やコンテンツがそもそも不足しており、理解できないことではなく物足りなさを感じさせているだけなのでは?学生が「理解」した感じられるのはどの程度の情報があれば良いのか? - 動画を見せることで仕事内容が理解できるのか?
→極論、完全な理解は不可能。理解ではなく、自分が働くことをイメージできるかどうかの方が重要では? - 動画を観たあとに、どんなアクションを期待するのか。
→仕事を魅力的に描くことはできるので、選考に進むというよりはセルフスクリーニングを促すことが動画の役割では?
…そのため、どのような背景があり、検討して、結論をだしたのか。そしてその根拠となるデータの有無なども含めて情報を開示する必要があります。
予算や納期、目的などを列挙するだけでは漏れてしまうこのような情報によって認識の齟齬が生まれてしまうと制作に大きな影響を与えるため、しっかりと可視化することで関係者間での共通認識を強固にしておくことは非常に重要なのです。
2.外注候補企業への情報提供が簡単
提案依頼書(RFP)を用意しておくと、外注候補となる制作会社への情報提供が非常にスムーズになります。
具体的には、
- 打ち合わせ時間の短縮など、情報提供の効率化
- 提供する情報の均質化
…という2点が挙げられます。
1.打ち合わせ時間の短縮など、情報提供の効率化
例えば提案依頼書(RFP)がなければ、各社と1時間程度打ち合わせを行い同じようなことを繰り返し聞かれては答えるという作業を繰り返すことになりますが、提案依頼書(RFP)が用意できていれば、打ち合わせ自体を行わず提案依頼書を送付してその内容に合意できれば提案してほしい旨を伝えるだけで完了できるケースもあります。
2.提供する情報の均質化
例えば、3社と打ち合わせをした際に必ずしも同じ質問をされるわけではないため発注側の担当者が制作会社に伝える情報にムラができます。また、仮に同じような質問をされたとしてもその質問の精度や回答のニュアンスによって提供する情報の質が変動する可能性もあります。更に、打ち合わせで聞き漏れたことを後追いでメールや電話で質問されることも多くなるでしょう。
3.提案・見積りの精度の向上
制作会社からのヒアリングに口頭で答えるのではなく、提案依頼書(RFP)を用意しておくことで「提供する情報を均質化」することができ、結果的に提案内容や見積りのブレを最小限に留めることができます。
口頭でのコミュニケーションの場合だと例えば、制作予算について聞かれた場合に200万円と答えたとします。その結果、
A社…200万円を上限として提案書・見積り書を作成する
B社…「例えば、100万円である程度のことができるのであれば、そちらを選ばれる可能性もあるか?」と聞かれYESと答えたので、100万円と200万円の提案書と見積書が出てくる
C社…200万以上の予算の確保の可能性を期待して、200、250、300万円の3パターンの見積書が出てくる
…とうそれぞれバラバラな見積りが出てくるというのは十分に考えられるケースです。
金額がバラバラで制作条件も微妙に制作費ごとに違っていて、どれがベストなのか?を選ぶのは難易度が高いです。
しかし、提案依頼書に
「制作予算:200万円(税別) 200万円を上限としてベストだと考えられるご提案・お見積りをお願いします」
と記載しておけば、上記の様なブレはなくなります。
もちろん、口頭でのやりとりでそのブレをなくすことも可能ですが、恐らく関係者間での口頭でのコミュニケーションや議事録レベルでのアウトプットだと、「200万円」という予算についてもそこまで精査できていない(上限が200万円なのか、安ければ安いほうが良いのか等)可能性が高いのではないでしょうか。
そしてこれは、制作予算だけではなく、納期や制作目的などあらゆる項目で起き得ることです。
提案や見積りの精度を上げるためには、制作要件についての解釈の余地を最小限にすることが必要であり、そのためにはやはり提案依頼書(RFP)を用意すること、そしてその過程でしっかりと関係者間でコミュニケーションすることが非常に重要なのです。
提案依頼書(RFP)に盛り込むべき項目
提案依頼書を用意する際に、盛り込むべき項目を列挙してみましたので、ご参考ください。
- 動画制作の背景・抱えいている課題
- 動画制作の目的
- 動画に期待する役割
- 動画の視聴ターゲット
- 視聴者に期待する心情やネクストアクション
- 納期
- 予算
- 提案書に盛り込んでほしい内容(must/want)
- 制作スケジュール
- 制作会社の選定スケジュール
- その他:契約条件等
制作する内容などによってはもちろん別途必要な項目もありますが、概ね上記の項目でクリアできるはずです。
また、これらの項目について記載する際には、次章もご参考ください。
提案依頼書(RFP)を用意する際の注意点
ここまでご説明したように、提案依頼書(RFP)はその内容はもちろん用意することそのものにもメリットの多い資料であるが故に、用意する際に気をつけるべきことが大きく2つあります。
1つは、
「あらゆる項目において、掘り下げて考える。掘り下げた内容も記載する。」
ということです。
例えば、ターゲットを「20−30代女性」とするのであれば、なぜそこをターゲットに設定するのか?についても記載しておき、補足できるデータがあれば提示できたほうが良いです。制作会社側の解像度をできるかぎり上げたほうが企画の精度も上がりやすいです。
2つめは、
「数値・定量で記載できる項目は記載する」
ということです。
例えば、目的について「〇〇というサービスの認知度を向上させる」ということであれば、「現状〇〇%の認知度を〇〇%まで向上させる」という記載の方がベターです。また、この場合は
- なぜ、〇〇%という目標設定なのか?
- どのような調査を行っているのか?
- 動画制作後の調査はいつ、どのような方法で行うのか?
などの補足・説明もあったほうが良いです。
最後に:提案依頼書を用意しなくても済む方法
提案依頼書(RFP)は、これまで用意したことのない方にとっては馴染みの薄いものかもしれませんが、ここまでご説明したように社内・外注先との共通認識を形成する上で非常に重要な資料です。
ただし、一定の予算を超える場合で提案依頼書(RFP)が無くてもスムーズに進行できる方法もあります。
それは、「信頼できて優秀な制作会社の営業担当者」を見つけることです。
優秀な営業担当者が用意する「提案書」には、必ず制作時に確認しておくべき項目が含まれているため正しい情報を提供することさえできれば用意してもらった「提案書」で社内の共通認識の形成ができるはずです。
また、優秀な営業担当者であれば「掘り下げる」「定量化する」という部分もヒアリングの中で行ってくれるはずなので、自分ひとりで考えるよりも効率よく情報整理ができるでしょう。
もしコンペを行って外注先の企業を見つけることを想定されている場合には、ぜひ「優秀な営業担当者を見つける」という視点も持ってみてください。
情報整理や予算の検討などの事前準備がご不安な方は筆者がお手伝いいたします。
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