半導体メーカーにおける動画の活用と制作のポイントを解説。事例も紹介。

近年逆風に直面している日本の半導体メーカー。

特にスマートフォンやPCなどの民生機器の需要低迷により、メモリ分野では苦境が続いています。

一方で、グローバル市場に目を移すと、2024年には市場が回復し、2025年には1240億ドルという過去最高の記録を更新する見込みです。この予測は、2023年に一時的な落ち込みを経験した後の市場の回復力を示しており、特に生産能力の拡大、新規ファブ建設、そして先進テクノロジーおよびソリューションからの需要増が大きな役割を果たすとされています。

SEMI、世界半導体製造装置の2023年末市場予測を発表
2025年の半導体製造装置市場は過去最高の1240億ドルへ
SEMI

本記事では上記のように、今後さらなる需要の増加によって市場の拡大が予想されている半導体メーカーにおいて、どのように動画が活用されているかをその制作のポイントや事例などを交えながら解説します。

目次

半導体メーカーの動画制作についてよくあるQ&A

半導体メーカーにおける動画の制作費はどれくらい?

制作する内容・企画によって変動するという前提になりますが、概ね50万円〜300万円程度の制作費で制作されるケースが多いです。TVCMやデジタルマーケティングなどに活用される動画の場合、1000万円を超えるケースもあります。

半導体メーカーにおける動画の制作期間はどれくらい?

制作する内容・企画によって変動するという前提になりますが、概ね2ヶ月程度であることが多いです。予算が大きくなると制作期間も長くなる傾向があるため、300万円以上の予算の場合には3ヶ月〜4ヶ月を想定した方がよいでしょう。

半導体メーカーにおける動画の活用方法にはどんなものがある?

「会社紹介」「工場紹介」「IR/株主総会」「新卒・中途採用」「プロモーション」「ブランディング」「研修・マニュアル」などが挙げられます。

半導体メーカーにおける動画の活用方法

会社紹介

会社紹介動画は、グローバルシーンにおける営業ツールや汎用的に活用できる「コーポレートムービー」など様々な用途を想定して制作される代表的な動画です。

会社における規模感、得意領域、理念・ビジョンなど様々な要素を網羅的にまとめ、「ウチはこういう会社です」というまさに自己紹介的な動画であり、その会社についてまだあまり詳しく知らない人への入門偏となるようなコンテンツであることが多いです。

工場紹介

場紹介動画の制作の相談を受け実際に多くの工場の紹介動画を制作しましたがその活用方法は大きく、

  1. 営業ツールとしての活用
  2. 工場見学時の補助ツール
  3. リクルーティング

…という3つです。

それぞれの用途で、誰に向けて何を強調・訴求するかなどは大きく変動しますが、共通するのは生産技術・生産規模・生産管理におけるノウハウや技術力の高さを視聴者に届けることで興味を持ってほしいという狙いであることです。

詳しくは下記にまとめましたので、ご興味のある方はご参考下さい。

IR/株主総会

IR/株主総会における動画の活用は、他の活用方法と比べると動画の活用・浸透が早かった領域です。それまで、株主総会に出向かないと直接経営者からの発表や質疑応答の様子を観ることができませんでしたが、LIVE配信を筆頭に動画の活用が進んでいます。

また、IR向けの動画コンテンツを用意しておくことは既存の株主だけではなく投資家向けのコンテンツとしても有用だと考えられます。IR向けの資料はあえて動画化する必要はありませんが、業績良好で投資家に向けたアピールをしたい企業にとっては、敢えてリッチなコンテンツを用意しておくことそのものがポジティブな影響を期待できます。

プロモーション

プロモーション…と一口に言っても特定の製品の新製品発表会などで活用されるコンセプトムービーや、製品の特徴をまとめた営業ツール、3DCGを活用した製品紹介などその活用方法は様々です。

半導体メーカー業界の場合、製品1個あたりの金額がどうしても他の業界と比較すると高くなるため、プロモーション動画についても比較的潤沢な制作費を用意されるケースが多いですが、製品紹介動画や展示会向けの動画の場合は予算を抑えて制作されるケースもあるため、必ずしも多くの予算が必要というわけでもありません。

ブランディング

テクノロジーの進化が加速していく中で、コモディティ化するスピードも上がっており他社との競争のためのプロモーションだけではなく、独自の世界観・ビジョンへの共感を促すブランディングの重要性が上がってきています。

半導体メーカー業界などのtoBの領域は、スペックや価格などによる意思決定が働きやすいですが、その「比較検討」の選択肢に入るために、特定の業界・特定の用途などにおいて「〇〇といえば、〇〇」というような3番目くらいまでに想起してもらえるような施策は非常に重要であり、そのためのツールとしてブランディング動画は非常に有用と言えます。

新卒採用・中途採用

少子高齢化における生産年齢人口の現象は既定路線となっており、技術の伝承も含め人材の確保は製造業界においても非常に重要な課題の一つです。

特に製造業界においては、AI/IoTなどの先端技術の実用化が進み製品だけの提供だけではなく、ネットワークを通じたサービスの提供も含めた価値提供がもとめられたり、より効率的な生産管理・在庫管理が実現したりなど新たな技術への対応も求められるなど、人材要件も高くなってきておりより激しい採用競争が続いています。

上手く動画を活用することで、応募数の増加〜内定承諾まであらゆるSTEPで効果を発揮するため自社の採用課題に合わせた動画の活用がポイントになります。

導入事例

導入事例のインタビュー動画は、toBの事業においてもっともよく使われる営業ツールです。実際に機械やサービスを導入した顧客がどのようなことに困り、それがどのように解決されたのかや、充実したアフターサービスに満足している様子などを実際に顧客に語ってもらうことで、導入を迷っている見込み顧客の背中を押す効果的な動画の一つです。

研修・マニュアル

人材研修や、製品マニュアルはわかりやすく「人件費」を抑制できる動画の活用法です。また、視聴者のニーズも明確であるため、必要以上の動画のクオリティが求められない=制作費も抑制しやすいため、取り掛かりやすい領域でもあります。

また、特にユーザー向けの製品マニュアル動画は、ユーザーが困っている時に必要な情報を届けることができるため、UXと呼ばれるユーザー体験としても非常にポジティブにはたらき、モノを届けるだけではなくその製品の活用を通した「コト」として価値が提供できる側面も注目されています。

半導体メーカーにおける動画制作のポイント

製造業界における動画の制作において、特に気をつけなければならないのは下記の4点です。

  1. 目的を明確にする
  2. ターゲットを明確にする
  3. 予算を確保する
  4. 視聴後に抱いてほしい感情・心情を明確にする

具体的にどのようなポイントを抑えるべきか、1つずつ解説します。

目的を明確にする

すごく当たり前のことなのですが、意外と見落とされがちです。

「なんとなくカッコいい動画」「とりあえずインタビュー動画を制作しようと思ってます」とかだと、あまり意味のない動画が出来上がってしまいます。本当にもったいないです。

ポイントは、

「動画制作の目的」と「動画に期待する役割」を分けて考えることです。

例えば、製品の購入を最終的なアクションとして期待する場合、動画制作の目的は「顧客に購入してもらうこと」です。しかし、その際に動画に期待する役割は「製品の理解」なのか「不安の解消」なのか「製品を認知してもらうこと」なのかによって制作するべき動画は大きく変わります。

必ずしも明確なKPIなどを設ける必要はありませんが、制作の目的については関係者間で明確な共通認識を形成しておくことが必要です。

ターゲットを明確にする

すごくすごく当たり前のことですが、これも見落とされがち…というか動画を制作するにあたっては少し解像度が荒い状態であることが多いです。

製造業のターゲットは殆どの場合「自社の社員」「顧客」のいずれか・もしくは両方となることが多いです。

  • 自社社員…どのような社員がよりコアなターゲットか。活躍している社員なのか、くすぶっている社員なのか。
  • 顧客…既存顧客なのか、新規顧客なのか。

…など、可能な範囲で具体化しておいたほうが企画立案だけではなく、社内関係者感の共通認識も形成しやすくなります。

企画に関して言えば、ターゲットがより具体的であればあるほど、動画としてもより具体的でターゲットが共感しやすい企画を立案しやすく、ターゲットが幅広く抽象的であればあるほど、「言いたいことはわかるけど、なんかぼんやりしている」動画になりやすいです。

前述の「目的」と紐づくため、ターゲットのことだけを考えても答えはでません。もしこの記事を読んで「あ…」と思った方は目的と合わせてどのようなアプローチが最適であるかについて、もう一度考えてみてはいかがでしょうか。

予算を確保する

目的・役割とターゲットが明確になれば、「この人に、この情報を、こんなふうに伝える」ということまで決めることができます。

しかし、予算が足りなければ「こんなふうに伝える」の部分が弱くなってしまったり、十分に表現できない可能性があります。

例えば、

  • 未来的なあり方を表現するために、3DCGが必要
  • 様々な事業における存在意義を提示するために、複数パターンの撮影が必要である
  • 自社の社員のインタビューが必要

など、適切な演出を加えたくてもそれらの機材・人を用意できなければそれは叶いません。

制作費を抑えて制作すること自体は可能ですが、企画内容によって制作費は大きく変わるため、できる限りお財布には余裕をもたせておいたほうが良いでしょう。

視聴後に抱いてほしい感情・心情を明確にする

動画を見たあとに、ターゲットに「どのような感情になって欲しいか」「どんな心情を抱いてほしいか」を明確にしましょう。

この点もやはり目的と紐づくため、この点だけを切り離して考えることはできませんが、

・強く共感し、より高いモチベーションで働いてほしい
・自分の仕事は高い社会性を帯びていることを思い出してほしい
・競合他社との違いは、サービスや製品のスペックだけではないと理解・共感してほしい

など、目的によってどのような感情・心情を抱いてもらうことが望ましいかも決まってきます。なんの脈絡もなく「かっこいい動画」「感動的な動画」などのような議論にならないよう気をつけましょう。

最後に

「半導体メーカー」という大きなくくりで動画の活用方法をまとめてみましたが、いかがでしたでしょうか。

「半導体メーカー」だからというよりは、「そもそもなんのために動画を制作し、活用するのか」という根本的な問いに対して、どれだけ高い解像度で回答を用意できるかで動画制作の成否は決まるため、まずは解像度をあげるための情報整理から始めてみることをおすすめします。

情報整理や予算の検討などの事前準備がご不安な方は筆者がお手伝いいたします。
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この記事を書いた人

【株式会社case 代表取締役/動画制作プロデューサー】加藤智史
新卒で入社した動画制作会社で広告・マーケティング・採用・人材研修など約400本の動画制作に携わる。その後、TVCMなどの制作を行う、大手制作会社にアカウントエグゼクティブとしてジョイン。数千万円規模のプロモーション案件に携わり、動画にとどまらないクリエイティブ制作やプロジェクトマネジメントを経験。現在は本メディアの運営を通じた企業の動画制作支援や、動画制作会社の営業支援などを行う。動画制作のご依頼の流れはコチラ

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