製薬メーカーにおける動画の活用のポイントを徹底解説。制作のポイントと事例も紹介。

製薬メーカーの医薬品紹介動画・医薬品プロモーション動画の制作時に必ずでてくるのが「薬機法」との兼ね合いで、どのような表現であればOKで、どのような表現はNGなのか?という問題です。

また、日本製薬工業協会(製薬協)の会員会社の場合、薬機法の遵守はもちろん製薬協が定める「製薬協コード・オブ・プラクティス」に基づいて下記のような厳しい規範に基づく行動を求められています。

会員会社は、製薬協コードの基本理念を踏まえ、生命関連産業の一員として公的医療保険制度のもとで企業活動が行わ
れていることに鑑み、医薬品医療機器等法等の関連法令はもとより、公正競争規約、製薬企業倫理綱領、製薬協企業行動
憲章および製薬協コンプライアンス・プログラム・ガイドライン等の自主規範を遵守するとともに、高い倫理観をもって行動する。

https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/0000184992.pdf

そのため、代理店や制作会社側も、一般的な動画制作と比較すると非常に細かくフィードバックを受けたり事前の確認が必要になるという特徴があります。

本記事では、あくまでも動画制作についての解説記事となるため「薬機法」などの細かい解説などは避け、一般的な医薬品紹介動画・医薬品プロモーション動画の事例や筆者の制作経験をもとに、制作時のポイントについて解説します。

目次

医薬品紹介・医薬品プロモーション動画についてよくあるQ&A

医薬品紹介・医薬品プロモーション動画の制作費はどれくらい?

制作する内容や予算によってかなり大きく変動します。150万円程度から2000〜3000万円とTVCMなどの制作予算規模で制作されるケースもあります。

医薬品紹介・医薬品プロモーション動画の制作期間はどれくらい?

制作する内容や予算によって大きく変動しますが、薬機法と兼ね合いや社内確認に時間がかかる特徴があるため、3ヶ月程度は想定しておいたほうが良いでしょう。

医薬品紹介・医薬品プロモーション動画の活用方法は?

医療関係者が参加するセミナーなどの幕間に放映する、YoutubeなどのSNS動画広告、TVCMの大きく3つに分かれます。

医薬品紹介・医薬品プロモーション動画の特徴

まず、医薬品における「プロモーション」という言葉の定義ですが、「製薬協コード・オブ・プラクティス」において下記のように定められています。

「プロモーション」とは、いわゆる「販売促進」ではなく、「医療関係者に医薬情報を提供・収集・伝達し、それらに基づき医療用医薬品の適正な使用と普及を図ること」をいう。

https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/0000184992.pdf

また、プロモーション資材(印刷物や動画など)の制作・使用については下記を尊守するようにも記載されています。

(1) 効能・効果、用法・用量等は承認を受けた範囲を逸脱して記載しない。
(2) 有効性、安全性等については、虚偽もしくは誇大な表現または誤解を招くおそれのある表示、レイアウト、表現を用いない。
特に安全であることを強調・保証する表現をしてはならない。
(3) 有効性に偏ることなく、副作用等の安全性に関する情報も公平に記載する。
(4) 他剤との比較は、客観性のあるデータに基づき原則として一般的名称をもって行う。
(5) 他社および他社品を中傷・誹謗した記載をしない。
(6) 例外的なデータを取り上げ、それが一般的事実であるかのような印象を与える表現をしない。
(7) 誤解を招くような、または医薬品としての品位を損なうような写真、イラスト等を用いない。
(8) プロモーション用印刷物および広告等は、会員会社内に医療用医薬品製品情報概要管理責任者等を中心とする管理体
制を確立し、その審査を経たもののみを使用する。

https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/0000184992.pdf

あくまでも筆者の経験から語れる範囲ですが、医薬品のプロモーション動画の多くは上記の通り効能や効果について触れたり、それらを明言することは徹底的に避けられるというのが特徴です。

一般的な消費財等の広告の場合は、「消費者にウソはつかないけれど、少しでも良いイメージを持ってもらう」ための演出なども見受けられますが医薬品紹介動画・医薬品プロモーション動画においては、薬機法やガイドラインに「全く抵触していない。抵触していると解釈される余地がない」というレベルで管理されていることが多いです。

医薬品紹介・医薬品プロモーション動画の活用メリット

症状の認知促進

病院で治療を受けたり、処方してもらえる薬で緩和できる可能性がある症状にもかかわらず、それを「症状」として認知していないというケースはかなり多くあるようです。具体的な症状に触れることは避けますが、そのような事例をピックアップする、あるいは特徴的なコピーやビジュアルで訴求することによって、ターゲットが抱えている悩みが実は治療・緩和できる可能性がある「症状」であるということを伝えられるのは、医薬品紹介・医薬品プロモーション動画のメリットの1つと言えます。

通院するべき診療科目の周知

上記のように、「実は病院で治療できる可能性がある」ことを知らせることができたら、次は「どの診療科目を受診すればよいのか」を知らせる必要があります。

「〇〇が気になったらまずは、〇〇科へ」などの表現は実際にTVCMなどでも観たことがあるのではないでしょうか。

このような形で、症状の認知からスムーズに通院するべき診療科目までを周知できるのは医薬品紹介・医薬品プロモーション動画のメリットの1つです。

医療関係者への認知拡大

動画の内容や放映される場所によって、どの程度認知されるかは大きく変わりますが、いずれにしても一般消費者と比較して圧倒的に医薬品へのアンテナを高く持っている方々であれば、仮にそれが患者さんや患者さんとなりうる方向けの動画であっても一定の認知拡大を見込むことができるでしょう。

また、そのようなプロモーションを広く行っていることを医療関係者が認知すれば、自分の病院やクリニックなどにもそのような悩み・症状を抱えた方が通院するかもしれないと考え該当する医薬品メーカーのMRへコンタクトをとったりなどの準備も可能になります。

医薬品紹介・医薬品プロモーション動画の活用方法

TVCM

最も広く多くの人に情報を届ける方法の1つとしては、やはりTVCMでしょう。媒体費も含めると数千万〜数億単位の予算が必要になりますが、「TVでみた」という事実はブランドイメージの向上にも繋がるため、有益な情報の提供という側面だけではないポジティブな影響も期待できます。

中外製薬30秒CM 「Innovation Lab/抗体医薬」篇

SNS動画広告

YoutubeやFacebook・Instagram、TwitterなどのSNS動画広告であれは、地域・性別・年齢・趣味などの属性によるターゲティングを行った上での配信が可能なため、よりターゲットに近い層へのリーチが可能になります。

各媒体毎の特徴は動画の後に記載しましたので、ご参考下さい。

子宮頸がん予防啓発 60秒WebCM「大切な人/毎年10,000人以上・年間約2,900人が…」篇

Youtube広告

動画の広告としての活用方法として最も一般的な媒体がYoutubeです。日本だけでも6500万人以上のユーザーを抱えており、またYoutube自体が「動画視聴」を目的とした媒体であることからも動画広告との相性は他の媒体と比較して良いと言えます。

インストリーム広告

Youtubeの動画広告のメニューの中で最も一般的なものが「インストリーム広告」と呼ばれるメニューです。目当ての動画の前に流れ、5秒後にスキップが可能になる「あのCM」が「インストリーム広告」です。前述の通り30秒未満の視聴であれば、広告費が消費されないため広告の無駄撃ち防止にもなるため、「とりあえずインストリーム広告で配信してみる」ということでも大きな問題はなく、初めての動画広告でも選ばれやすいメニューです。

Facebook広告・Instagram広告

Facebook広告・Instagram広告はYoutubeに次ぐ、動画広告の配信媒体です。Youtubeと比較するとFacebookならではの細やかなターゲティングが可能である点が特徴です。ご存知の方も多いと思いますが、InstagramはFacebookと同じ会社が運営していることから、ターゲティング可能な項目などは全く同じです。

Facebookをご利用であればおわかりになるかと思いますが、例えば大学卒であることや誕生日、居住地、GPSを利用した位置情報なども含めてかなり細かいデータでターゲティング可能であるということがFacebookの最大の特徴です。

そのため、例えば「30代〜40代の都心に住むビジネスパーソン向けの商材・サービスであればFacebook」「20〜30代のダイエットに関心の強いファッション、ビューティー向けの商材・サービスであればInstagram」など、対象となる商材・サービスやターゲット層などによって使い分けられます。

Twitter

Twitterでの動画広告の魅力は「高い拡散性」「リアクションのハードルの低さ」の2つです。拡散性については、世にいう「ネットでの炎上」のほとんどがTwitterで起きていることを考えると理解しやすいでしょう。リツイートや引用リツイートによって、リーチしたターゲットだけではなくそのターゲットのフォロワーにもリーチできるというのは他の媒体には無い魅力です。

「リアクションのハードルの低さ」とは「いいね」が容易であるということです。物理的に「いいね」ボタンが押しやすいというよりも、例えばInstagramのように「この写真にいいねをするんだ」のようなある種の「値踏み」文化がTwitterは比較的薄いため、ユーザーは気軽に「いいね」することが可能です。

ユーザーに「いいね」されることによって、フォロワーに「〇〇さんにいいねされました」と表示されることもあるため、「いいね」という「リアクションのハードルの低さ」が「高い拡散性」に繋がりより高い広告効果を期待できます。

また、Twitterは収集・発信する情報によって複数のアカウントを使い分けているユーザーも多く、年齢・性別などの属性情報に加えて趣味・嗜好による広告配信とも相性が良いと言えます。

各種セミナーなどでの放映

セミナーの主旨などによっても放映に適切な動画であるかどうかを十分に検討する必要がありますが、多くのドクターが参加するようなセミナーを定期的に開催しているようであれば、セミナー放映のための動画を制作するのも1つの方法です。

下記の事例は、あくまでもドクターではなく一般消費者・患者さん向けの動画ですが、例えばこのように「患者さんが抱えている悩みや向き合っている現実」をドクターに見てもらうというのは目的によっては決してありえない方法では無いでしょう。

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医薬品紹介・医薬品プロモーション動画の制作のポイント

目的を明確にする

医薬品紹介動画・医薬品プロモーション動画を制作する上で、非常に重要なのがその目的を明確にし、可能な限り解像度を上げることです。

例えば、動画制作の最終的な目的が「該当する診療科目を受診してもらうこと」だとします。

では「該当する診療科目を受診」してもらうために、動画はどのような役割を果たすべきでしょうか。

  1. 抱えている悩みが、実は病院で治療できる可能性があることを知ってもらうこと
  2. 自分では気づきにくい症状であるため、周りの人がやさしくフォローしてあげてほしいと伝えること
  3. 既存の医薬品と比較して、副作用が弱い特徴があるためかかりつけ医に相談してもらうこと

など、医薬品の特徴やマーケティング上の課題によって動画の役割も大きく変化します。

医薬品が持つ強みや、何がターゲットの意思決定の材料になるのかをしっかりと分析・把握し動画の役割を明確にしましょう。

ターゲットを明確にする

この動画は「誰が見るのか」「誰に観せたいのか」を明確にしましょう。前述の動画の役割にも紐づきますが、この動画を観る人が

  • 悩みとしては大きなものではないが、できれば改善したいと思っている人
  • 病院で治療できる可能性があるとは知らず、深く思い悩んでいる人
  • 本人が悩み、傷つく前になんとかしてあげたいと考える保護者・両親

…など、動画を見る人が誰であるかで訴求するべきポイントや表現方法は大きく変わります。何がターゲットの意思決定の材料になるのかをしっかりと分析・把握するためにも、ターゲットは明確にする必要があります。

コール・トゥ・アクションを明確にする

「行動喚起」と訳され、デジタルマーケティングの世界ではユーザーに「次に起こしてほしい行動」を誘導することを指します。

つまり、動画を視聴したあとの行動としてどのような行動を期待するのか、そしてそのためにどのような気持ち・感情になって貰う必要があるのかを明確にしましょう、ということです。

当然ですが、やはりこの点についても目的との紐づきがあり、目的の解像度が低いとターゲットやコール・トゥ・アクションも同じように解像度が低い可能性が高いです。

もし、動画制作を具体的に検討しているようでしたら、まずはこれらのポイントを整理することから始めてみましょう。

予算を確保する

目的・役割とターゲットが明確になれば、「この人に、この情報を、こんなふうに伝える」ということまで決めることができます。

しかし、予算が足りなければ「こんなふうに伝える」の部分が弱くなってしまったり、十分に表現できない可能性があります。

医薬品紹介動画・医薬品プロモーション動画は薬機法やガイドラインを尊守はもちろん、企画内容や活用媒体によって必要な制作予算は大きく変動するため、できる限り余裕を持った予算を確保しておいたほうが良いでしょう。

医薬品紹介・医薬品プロモーション動画の事例

これまでご紹介した事例以外に、3つほど事例をピックアップしましたので、ぜひご参考下さい。

Vol.7 【ツライ生理の救世主】低用量ピルは長期間飲んでも大丈夫!?

悪性リンパ腫 疾患啓発ムービー|中外製薬

子宮頸がん予防啓発 30秒TVCM「大切な人」篇

最後に

いかがでしたでしょうか。医薬費紹介動画・医薬品プロモーション動画は薬機法やガイドラインの尊守という大前提に基づくため、それを踏まえて視聴者にどのような情報を届け、どのようなアクションを起こしてもらうのかという設計は非常に難易度の高いものです。

薬品紹介動画・薬品プロモーション動画の制作を検討される際には、制作会社や広告代理店に相談するまえに一度情報整理や予算の検討など、事前準備をしっかりと行った上で問い合わせるようにしましょう。

情報整理や予算の検討などの事前準備がご不安な方は筆者がお手伝いいたします。
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この記事を書いた人

【株式会社case 代表取締役/動画制作プロデューサー】加藤智史
新卒で入社した動画制作会社で広告・マーケティング・採用・人材研修など約400本の動画制作に携わる。その後、TVCMなどの制作を行う、大手制作会社にアカウントエグゼクティブとしてジョイン。数千万円規模のプロモーション案件に携わり、動画にとどまらないクリエイティブ制作やプロジェクトマネジメントを経験。現在は本メディアの運営を通じた企業の動画制作支援や、動画制作会社の営業支援などを行う。動画制作のご依頼の流れはコチラ

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