モーショングラフィックス(Motion Graphics)動画の制作期間・制作スケジュールは、要件の複雑さや動画のクオリティと社内の承認フローで大きく変わります。
まずは希望する納期から逆算して、どのレーン(標準/短納期/特急)で走るかを最初に決めるのが成功の近道です。
本記事では標準7〜8週・短納期5〜6週・特急4週の3モデルを比較し、工程別WBS、展示会に間に合わせるための逆算スケジュール、よくある遅延と対策までを実務目線で整理しました。
最後までお読みいただければ、そのまま自社の動画制作の計画に反映できるはずです。ぜひご一読ください。
この記事の要点
- 標準制作期間:要件確定後7〜8週間が目安。品質と修正回数を確保できる現実的なスケジュール
- 短納期対応:5〜6週間で可能だが、修正上限と10〜20%の割増費用が発生
- 特急対応:4週間は条件付き。30〜50%の割増と演出・品質の制約あり
- 成功の鍵:逆算計画/承認フローの事前確定/素材の早期準備/レビューSLA(回答期限)合意/バッファ確保
モーショングラフィックス動画の制作期間・スケジュールの全体像(結論)
結論:初めての方は標準7〜8週が最も安全。短納期は「要件凍結+レビューSLA+既存アセット活用」を満たしたときのみ現実的です。
モデル | 期間 | 想定クオリティ | 含まれる作業 | 修正回数目安 | 追加費用目安 |
---|---|---|---|---|---|
標準モデル | 7〜8週間 | 高品質・演出に余裕 | 企画〜納品(全工程) | 2〜3回 | なし |
短納期モデル | 5〜6週間 | 標準品質・演出簡素化 | 並行作業・工程圧縮 | 1〜2回 | +10〜20% |
特急モデル | 4週間 | 最低限品質・シンプル演出 | 必要最小限の工程 | 0〜1回 | +30〜50% |
モーショングラフィックス動画のスケジュールを左右する要因

「なぜ時間がかかる/短縮できるのか」を理解すると、握るべき条件と依存関係、クリティカルパスが見えます。
- 動画の尺:15秒と60秒では制作工数が2〜3倍変動
- 演出密度:テロップ中心か、複雑なアニメーション多用か
- デザイン点数:イラスト・アイコン・グラフの新規制作数
- 修正回数:1回の修正で1〜3営業日
- 関係者数:承認者が多いほどレビュー期間が延伸
- 承認リードタイム:社内決裁に1〜7営業日(一般的)
- ナレーション収録:有無で3〜5営業日の差
- 多言語化:1言語追加で1〜2週間延びる
モーショングラフィックス動画の制作スケジュール(WBS)
標準8週間
標準モデルの動き方です。RACI(R=担当、A=決裁、C=相談、I=共有)を明示して、レビュー滞留を防ぎます。ガントチャート化し、各フェーズにSLA(Service Level Agreement=回答期限の合意)とバッファを設定しましょう。
週 | 工程 | 主作業 | 成果物 | クライアント | 制作会社 |
---|---|---|---|---|---|
1週目 | 企画・構成 | キックオフ、要件整理 | 要件定義 | A/C | R |
2週目 | 企画・構成 | シナリオ、絵コンテ | 構成案・絵コンテ | A | R |
3週目 | デザイン制作 | スタイルフレーム、UI設計 | デザインカンプ | A | R |
4週目 | デザイン制作 | 各パーツ量産 | デザイン一式 | C | R |
5週目 | アニメーション | モーション設計、ラフ作成 | ラフアニメーション | C | R |
6週目 | アニメーション | 本制作、仮MA | 初稿動画 | A | R |
7週目 | 修正・調整 | FB反映、仕上げ | 改訂版 | A | R |
8週目 | 最終・納品 | 最終確認、書き出し | 完成動画 | A | R |
短納期(5〜6週間)モデルの進め方|並行化と修正上限
短納期では並行化と修正の上限設定が肝心。事前合意なしで突っ込むと、むしろ遠回りです。
項目 | 標準モデル | 短納期モデル |
---|---|---|
企画・デザイン | 順次進行 | 並行作業 |
修正回数 | 2〜3回 | 1〜2回に制限 |
レビュー期間 | 3〜5営業日 | 1〜2営業日 |
承認フロー | 通常 | 決裁者限定 |
- 並行化の前提:要件確定前のデザイン探索を限定し、方向性を早期決定
- 修正回数制限:大幅な方向転換は不可。微調整レベルに限定
- レビューSLA:各フェーズ48時間以内の回答に合意
- 想定リスク:品質の妥協、手戻りによる追加費用の可能性
特急(4週間)モデル|最短納期の条件と制約
- 可能条件:既存CI・素材完備、決裁者1名、制作チームの稼働確保
- 割増費用:30〜50%(目安)
- 品質制約:シンプル演出/テンプレ活用/修正0〜1回
- 演出制約:複雑なアニメーション、オリジナルイラスト制作は不可
逆算スケジュール(展示会・イベント向け)
開催日(T日)を起点に戻り日程を先に固定。最後に制作工程を当てはめると判断がブレません。
タイミング | 主な作業 | 注意点 |
---|---|---|
T-8週 | 制作会社選定、要件定義 | 相見積もり、契約締結 |
T-6週 | 制作開始、構成確定 | 素材提供、承認フロー確認 |
T-4週 | 初稿レビュー | 大幅修正はこの段階まで |
T-2週 | 最終版確定 | 微調整のみ、納品準備 |
T-1週 | 納品・検収 | バッファ期間として確保 |
T-1日 | 会場設営、動作確認 | バックアップデータ準備 |
技術要件の早見表(書き出し・仕様)
事前に会場・配信先の仕様を確認し、解像度/fps(フレームレート)/書き出し形式を固定しておくと手戻りを防げます。
用途 | 解像度 | fps | 書き出し形式 | 備考 |
---|---|---|---|---|
展示会モニター | 1920×1080(1080p)/ 3840×2160(4K) | 29.97または59.94 | H.264(MP4) | ループ可否/音声有無を確認 |
Web埋め込み | 1920×1080 | 29.97 | H.264(MP4) | ビットレート最適化 |
アーカイブ・マスター | 1920×1080〜4K | 30または60 | Apple ProRes | 再編集用に保存 |
縦型SNS | 1080×1920(9:16) | 30または60 | H.264(MP4) | レイアウト再設計に注意 |
体制と役割
役割と責任の境界が曖昧だと承認が止まりがち。RACIを先に定義し、連絡経路を一本化しましょう。
役割 | 企画 | デザイン | アニメーション | 音響 | 納品 |
---|---|---|---|---|---|
ディレクター | R | A | A | A | R |
プロデューサー | A | C | C | C | A |
デザイナー | C | R | C | I | I |
モーションデザイナー | I | C | R | C | C |
エディター | I | I | C | R | C |
サウンドデザイナー | I | I | I | R | I |
外注・内製の組み合わせ例:企画・ディレクションは内製、デザイン・アニメーションは外注が一般的。音響は専門性が高いため外注推奨。初回打合せで組み方を固定すると、その後の意思決定が速くなります。
依存関係の見える化(例)
原稿確定 → ナレーション収録 → MA(整音) → 最終書き出し → 検収。いずれかが遅れると後段が連鎖で止まります。クリティカルパス上の作業は優先してロックしましょう。
- クリティカルパス例:要件凍結 → 構成確定 → デザイン承認 → アニメーション本制作 → MA → 書き出し → 検収
- 先行できる作業:BGM候補集め、テロップ用語統一、テロップ最大文字数・フォント指定、書き出し仕様の事前確定
- ボトルネック対策:レビュー期限のSLA化/決裁者の事前押さえ/差し戻し基準の明文化(軽微/中/大)
修正回数と所要日数の関係
「どの段階で直すか」で、同じ内容でも手当て時間が変わります。コスト感の目安を共有しておくと合意がスムーズです。
修正タイミング | 修正内容 | 所要日数目安 | コスト影響 |
---|---|---|---|
構成段階 | 構成変更、尺調整 | 1〜2営業日 | 低 |
デザイン段階 | 色調整、レイアウト変更 | 1〜4営業日 | 中 |
アニメーション段階 | 動きの調整、タイミング変更 | 2〜5営業日 | 高 |
最終段階 | 微調整、書き出し設定 | 1営業日 | 低 |
重要:工程が進むほど修正コストが上がります。大幅な変更は初期段階で完了させることが費用抑制の鍵です。
まとめ:よくある遅延要因と対策
遅れる理由の多くは「準備不足」と「承認の滞留」。以下を事前に握っておけば、致命的な延伸は避けられます。
- 原稿遅延:テロップ・ナレーション原稿の未確定 → 仮原稿での先行制作
- 決裁者不在:承認者の長期不在 → 代理承認者の事前指名
- 素材不足:ロゴ・写真・動画素材の未提供 → 素材チェックリストの事前共有
- 仕様変更:制作途中での尺・比率変更 → 要件定義書での仕様固定
- スコープ外要望:契約範囲外の追加要求 → 変更管理プロセスの明文化
端的に要点に絞って解説しているため、少しわかりにくい部分もあったかもしれません。スケジュールのご相談や納期に間に合うかが不安などありましたら、お気軽にご相談くださいませ。
情報整理や予算の検討などの事前準備がご不安な方は筆者がお手伝いいたします。
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よくある質問
- モーショングラフィックス動画の制作期間はどれくらいが妥当ですか?
-
要件確定後7〜8週間が標準です。短納期は5〜6週間、特急は条件付きで4週間まで圧縮できます。
- 短納期でも品質を落とさないコツは?
-
①要件凍結、②レビューSLA(48時間)合意、③既存CI/素材活用、④修正上限の設定。この4点で手戻りを最小化します。
- 尺やアスペクト比の変更はいつまで可能ですか?
-
企画〜デザイン段階が推奨です。アニメーション以降はコスト・納期への影響が大きくなります。
- ナレーション収録はスケジュールにどのくらい影響しますか?
-
キャスティング〜収録〜整音で3〜5営業日が一般的。原稿確定とスタジオ押さえを前倒しにすると短縮できます。また、宅録対応であれば更1〜2営業日での収録も可能です。
- 英語版など多言語展開の追加期間は?
-
言語1つにつき1〜2週間が目安(翻訳/ネイティブチェック/テロップ調整/必要に応じて再収録)。同時進行は可能ですが、修正時の影響範囲が広がります。
まとめ(チェックリスト)
- 逆算計画:使用予定日から8週間前に制作開始できるスケジュールを確保
- 承認フロー:決裁者と承認期限を事前に確定し、制作会社と共有
- 修正回数:契約時に修正回数と範囲を明確化し、追加修正の費用を確認
- 素材準備:ロゴ、写真、既存動画などの素材を制作開始前に準備完了
- 体制確認:各工程の担当者と連絡先を明確にし、RACI表を作成
- 予備日設定:納期の1週間前を完成目標とし、バッファ期間を確保
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