企業が投資家やアナリストとの関係性を健全に保つために、財務情報や経営戦略などを伝える活動であるIR(Investor Relations)。その手段は様々ですが、株主への信頼を築き、企業価値の向上を図ると言う目的は共通と言えます。
近年、そのIR情報を「動画」で伝える企業も増えてきていますが、それはなぜでしょうか。
本記事ではIR動画の活用のメリットや制作のポイントとともに、事例を紹介します。
よくあるQ&A
- 制作費はどれくらい?
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制作する動画や企画の内容によりますが、概ね50〜200万円ほどの幅で制作されるケースが多いです。タクシー広告やTVCMなどでの放映の場合は500〜3000万円ほどかかるケースもあります。
- 制作期間はどれくらい?
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制作する動画や企画の内容によりますが、比較的シンプルなものであれば1ヶ月・一般的なもので2〜3ヶ月程度を想定しておくと良いです。
- IR動画にはどんな種類がある?
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株主総会のライブ配信、コーポレートムービーや事業紹介、コンセプトムービーなどがあります。
IR動画とは?
IR動画とは、企業が投資家やアナリストとの関係性を健全に保つために、財務情報や経営戦略などを伝える活動であるIR(Investor Relations)に動画を活用したものを指します。
これまで、「決算短信」「四半期決算短信」「有価証券報告書」「四半期報告書」などをドキュメントで公開していたものを改めて動画でわかりやすく説明、解説することでより積極的な情報公開の姿勢と事業展開への期待感を醸成するなどの狙いがあります。
IR動画を活用するメリット
IRに敢えて動画を活用するメリットは何でしょうか。IRはそれ自体が売上の向上につながるものではなく、あくまでも投資家や株主とのコミュニケーションの一環としての情報発信であるため、企業としても株主としても無駄にお金をかけることは好ましいとは言えません。
しかし、それでも徐々に動画の活用が増えてきているのには理由があります。
- より正しい理解の促進
- ブランドイメージの向上
- 再利用可能であること
- 競合との差別化
以上の大きく4つがIRに動画を活用するメリットだと言えます。1つずつ説明します。
①より正しい理解の促進
IR情報はそれ自体が株主や投資家の意思決定に大きな影響を与えるものであるため、精査された正しい情報・ファクトをわかりやすくまとめてあることが前提です。
しかし、情報の性質上専門性の高い言葉が多くわかりにくくなりがちで、かつ、隅々まで目を通すというよりはより重要な情報をかいつまみながら斜め読みされることも多いため、必ずしも発信者の意図が正しく受け取ってもらえるとは限りません。
その点、動画であれば「伝えたい情報を、伝えたい順番で伝えられる」という特徴があるため関連性の高い情報を紐づけながら説明したり、将来性のある事業展開との関連性を強調することなどが容易になります。
②ブランドイメージの向上
IRに動画を活用する企業が増えてきていると言っても、全体でみればまだまだ少数です。そのため「動画を活用している」という事実・姿勢が「積極的に情報を公開している」というポジティブなイメージにつながりやすいと言えます。
また、その動画のクオリティが高く、よりわかりやすく本質的な情報提供に役立っていれば尚更です。
一方で、「敢えて動画を制作する」ことはその分コストをかけることにもなるため、「動画作ったのにわかりにくい」「動画のクオリティが低く観る気にならない」という結果になるとネガティブなイメージに繋がりかねないため注意が必要です。
再利用可能であること
動画は一度制作してしまえば、Youtubeを始め様々な媒体での配信が可能です。
また、動画の一部を切り出して「会社紹介動画」「コーポレートムービー」などとして営業活動で活用したり、展示会で放映するなども可能で、再利用性が非常に高いこともメリットの①つです。
競合との差別化
IR情報を精査する投資家・株主であれば貴社の競合となる会社の情報も同じように精査している可能性が高いと言えます。
そのため、例えばその競合がIRに動画を活用しておらず貴社が非常にわかりやすい動画を用意し積極的に情報を公開していればそれは明確な差別化になります。
IR動画の事例
IR動画は大きく下記の3つのパターンにわかれます。
- 株主総会や投資家向け説明会を配信し、配信したデータをアーカイブとして残す
- 株主総会で行う決算説明に動画を活用する
- 会社紹介動画、中期経営計画の説明など「会社、事業について説明」する動画
それぞれのパターンの事例をピックアップしたので、ご参考ください。
①株主総会や投資家向け説明会を配信し、配信したデータをアーカイブとして残す
株主総会で行う決算説明に動画を活用する
2024年 3月期 第2四半期 GMB 決算説明 IR動画
会社紹介動画、中期経営計画の説明など「会社、事業について説明」する動画
【会社紹介】ポート株式会社
フェローテックホールディングス IR事業紹介動画 2023
三菱商事株式会社主催・制作IR動画 三菱商事が分かるショートムービー公開
動画制作を依頼する際のコツ
ある程度制作会社の目星がついてきたら、実際に問い合わせて制作会社の話を聞いてみる段階です。
実はここにもこつがあるので、2点紹介します。
①事前にしっかり情報を整理する
動画制作会社は「動画制作」のプロフェッショナルですが、動画で紹介するサービスや商材など対象物についてのプロフェッショナルではありません。
そのため、
- なぜ動画を制作しようと考えたのか
- 動画を見せたいターゲットはだれなのか
- 動画を見せたあとに、どんな感情を抱き・行動してほしいか
などの、いわゆる5W1Hの情報は事前にしっかりと整理しておく必要があります。もちろん、制作会社に相談しながら進めるのも1つの手ですが、事前に自分たちでやっておくほうがメリットは大きくそれが②のコツに繋がります。
②「問い合わせ」する際のコツ
制作会社への問い合わせも単に問い合わせフォームにざっくり用件と連絡先を入力・送信するだけではもったいないです。制作を上手く進行するための最初のステップだからこ重要なポイントがあります。
それは「いかに制作会社に本気になってもらうか」です。
本気になってもらうことで、「比較的優秀な営業担当を割り当ててもらえる可能性が高くなる」というのが制作会社側に本気になってもらうことのメリットです。営業担当が優秀であれば、その分良い提案を貰える可能性は高まりますし、発注後の制作進行もスムーズになる可能性が高まります。
このあたりは、下記の記事にまとめていますので、もしご興味いただけましたらぜひご覧ください。
動画制作の外注に失敗しないための4つのポイント
動画制作を外注した経験のある人の中には、なんらかの理由で「失敗した」「上手くいかなかった」と感じている方がいます。筆者も制作会社の営業として担当したお客様からそのような「以前お願いした会社で上手くいかず…」という相談を受けたことが何度かあります。
詳細は下記の記事にまとめていますが、ここでは失敗しないために重要な4つのポイントをご紹介します。
適切な制作会社を選ぶ
「それができれば苦労しない」と言われてしまいそうですが、やはりこの点は重要です。
ここで端的にお伝えしたいのは、「信頼できる営業担当者を選ぶ」という視点をもってみることです。
筆者が動画制作に携わり始めた10年ほど前とくらべると動画制作会社は格段に増えました。そしてどの会社も甲乙つけがたいほど豊富な制作実績を持っています。(弊社はまだ会社としての実績は少ないですが…)
その中で何をポイントに選ぶか?の1つのポイントが上記の「信頼できる営業担当者を選ぶ」という視点です。
詳しくは下記の記事にまとめていますが、端的にお伝えすると、
- 優秀な営業担当は、優秀なプロデューサー、優秀なクリエイターをアサインできる
- 優秀な営業担当は、無用なトラブルを避けてくれる
- 優秀な営業担当は、コミュニケーションがスムーズ
という3点です。「絶対この会社がいい!」と思える会社が見つからず悩むことがあればぜひ参考にしてみてください。
そしてもし悩むようであれば、ぜひ筆者にもご相談ください。
スケジュールに余裕を持つ
基本的なことではありますが、何らかの理由で急いで制作を進めなければならないケースもあります。そのような場合、
- 人的なリソースを確保するために通常スケジュールでの進行よりもお金がかかる
- 急ぐ分、準備・確認に通常より時間を割くことができず何らかのトラブルが起きる可能性が高くなる
…というリスクがあります。
会社によっては、短納期でも費用を抑えて制作してくれる会社もあるかもしれませんがそれでもスケジュールを短縮するということは、どこかでなにかを犠牲にせざるを得ません。
もちろん、通常スケジュールよりもトラブルが起きる可能性が高まるというだけで、「必ずトラブルになる」「失敗する」わけではありません。制作に慣れているプロが進行する以上、トラブルの種は極力排除し最大限問題なく進行できるよう尽力することは間違いありません。
ただ、それでも想定外のトラブルに見舞われることもあるのが動画をはじめ、クリエイティブ制作の現場です。
だからこそ、できる限りスケジュールには余裕を持つことを強くおすすめします。
制作内容によって変動しますが、採用動画であれば、最低2ヶ月。できれば3ヶ月ほど制作スケジュールが確保できると良いでしょう。
上記はあくまでも「制作期間」なので、制作会社を選んだり正式に発注するまでのリードタイムがどれくらい必要になるかについては、自社の稟議や予算申請のフローについて事前に把握しておく必要があります。
完成イメージをできるだけ具体的にする
いざ、動画制作をスタートする際には制作会社側からどのような動画が完成する予定であるかは絵コンテやシナリオなどの資料を用いて説明があるはずです。
動画制作に慣れていれば、そのような資料で具体的なイメージを持つことができますが、初めての場合にはそれでもイメージが難しいこともあるでしょう。
そのような場合には、遠慮なく制作会社側に質問してイメージの具体化に努めましょう。
制作過程で完成イメージの認識の相違などのズレが生じてしまうと、軌道修正には時間とコストがかかってしまいます。
社内調整を怠らない
発注側の企業の担当者の方の役割の1つが、自社内のステークホルダーとの共通認識の形成です。
- こんな目的でこんな動画を制作します。
- これが完成イメージです。
- いつころ完成予定です。
- このタイミングでシナリオや動画を確認して、いつまでにフィードバックしなければなりません
…などなど、動画制作の背景や前提、クリエイティブイメージ、スケジュールなどについて関係者としっかりと「握る」ことができていないと、後になって「どんでん返し」が起きることは珍しいことではありません。
特に、動画制作について最終的なOKを出せる決裁権者とのすり合わせは重要です。
最後に
いかがでしたでしょうか。IRに動画を活用する際には「一番の目的はなにか?」「再利用性を高めたい」など可能な範囲でしっかりと情報を整理し、制作に臨みましょう。もし動画制作を検討される際にはぜひcaseにもご相談ください。要件整理からご一緒させていただきます。
情報整理や予算の検討などの事前準備がご不安な方は筆者がお手伝いいたします。
是非、下のボタンからお気軽にお問い合わせください。