アメリカのトップ企業が所属する財界へのロビー団体である「ビジネス・ラウンドテーブル」が「企業のパーパスに関する宣言」を発表したことや、SDGsの文脈も加わりビジネスシーンにおいて注目を集めている「パーパス」。
パーパスは本来「目的」と訳される言葉ですが、企業経営においては社会的な存在意義を示す言葉として浸透し始めており、いわゆるMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の上位概念として位置づけPMVVとしている企業もあります。
本記事では、そんなパーパスを動画として表現する際のパーパスムービー制作のポイントについて企業の活用事例を交えながら解説します。
パーパスムービーについてよくあるQ&A
- パーパスムービーとは?
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企業が掲げる、企業が果たすべき使命や存在意義などを動画で表現したものです。
- パーパスムービーの制作金額はどれくらい?
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パーパスムービーだからいくら、というよりはどのような企画・制作内容によって大きく変動しますが、具体的には50万円〜数百万円、数千万円規模の予算まで様々です。
- パーパスムービーの制作期間はどれくらい?
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パーパスムービーだから…というよりは、どのような企画・制作内容によって大きく変動しますが、購入可能な動画素材を活用したものであれば1ヶ月程度でも制作可能です。一般的な動画制作の期間としては2〜3ヶ月程度を想定しておくと良いでしょう。
パーパスムービーとは?
パーパスムービーは、端的にいうと「企業が掲げている使命や存在意義を動画として表現したもの」です。
では、そもそもパーパスとはどういう意味なのか、簡単に触れたいと思います。
パーパスとは
まず、パーパスとはどのような意味でしょうか。
先述の通り、パーパスは本来「目的」と訳される言葉ですが、企業経営においては社会的な存在意義を示す言葉として浸透し始めており、いわゆるMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の上位概念として位置づけPMVVとしている企業もあります。
- P:パーパス…企業の社会的な存在意義
- M:ミッション…企業がなすべきこと
- V:ビジョン…企業のあるべき姿
- V:バリュー…企業、社員がやるべきこと
上記における、「企業の社会的な存在意義」を定めたものが「パーパス」です。
そしてそれを、動画で表現したものが、パーパスムービーということになります。
ただし、全ての企業で必ずしもPMVVが定められているわけではなく、旧来の企業理念などの位置づけとしてパーパスという言葉が使われているケースもあるため、上記はあくまでも企業経営におけるパーパスという言葉の位置づけの1つと考えたほうがよいでしょう。
パーパスについては、下記の記事にわかりやすくまとまっているので興味のある方は合わせてお読み下さい。
パーパスムービーの活用メリット
パーパスムービーを活用する最大のメリットは「理解・共感が容易」ということに尽きるでしょう。
テキストだけで表現する場合、どうしても堅苦しくなりがちで比較的短い文章で表現されることが多いため、そこに込められた想いや背景などまでを届けることは難しいです。
もちろん、しっかりと文章で補足・説明することも可能ですが「ファクト」としての情報だけではなく社会とのつながりを「情緒」を交えて表現するということになればやはり動画の方が伝わりやすいでしょう。
以下で、なぜ動画の方が「情緒」を表現しやすく、また理解・共感が容易であるかについて説明します。
3Vの法則(メラビアンの法則)
メラビアンの法則とも呼ばれる、アメリカの心理学者が提唱した有名な法則があります。
話し手が聞き手に与える影響には「言語情報(Verbal)」「聴覚情報(Vocal)」「視覚情報(Visual)」の3つがあり、言語情報が7%、聴覚情報が38%、視覚情報が55%影響を与えるとされており、圧倒的に「視覚情報」つまり目から入ってくる情報が聞き手に与える影響は大きいのです。
テキスト情報の5000倍と言われる動画の情報量
動画が持つ情報量はテキスト情報の5000倍とも言われています。
視聴者がテキストの5000倍の情報をもらさずに受け取ることができるかどうかはさておき、もともとの情報量が多いため、仮に視聴者がテキストと動画の2つの媒体に同じ時間触れたとすると圧倒的に動画から入ってくる情報が多くなるというのはおそらくご自身の実体験からも納得のいくものではないでしょうか。
共感を促すために必要なのは情報量
視聴者に企業が掲げる理念に「共感」してもらうためにはそれ相応の情報量が必要になります。
例えば、感動的なドラマや映画を観て涙することがあったとします。
涙するのはどのドラマや映画のストーリーを通じて登場人物やそのシチュエーションへの「共感」があるからです。
30分あるいは1時間の間そのストーリーを目にしていたからこそ、実際には無い物語と存在しない登場人物に共感し涙してしまうというのは誰しも経験があるのではないでしょうか。
つまり、「共感」するためにはそれに足るだけの情報量が必要なのです。
そして、動画であれば少なくとも視聴者へ与える情報量を他の媒体よりも担保しやすい分「共感」が重要なポイントとなるパーパスムービーにおいてより強力な効果を発揮しやすいと言えるのです。
パーパスムービーの制作のポイント
パーパスムービーの制作において、特に気をつけなければならないのは下記の4点です。
- 目的を明確にする
- ターゲットを明確にする
- 予算を確保する
- 視聴後に抱いてほしい感情・心情を明確にする
具体的にどのようなポイントを抑えるべきか、1つずつ解説します。
目的を明確にする
すごく当たり前のことなのですが、意外と見落とされがちです。
「なんとなくカッコいい動画」「とりあえずインタビュー動画を制作しようと思ってます」とかだと、あまり意味のない動画が出来上がってしまいます。本当にもったいないです。
特にパーパスムービーの場合、比較的抽象性の高いテーマであるため、関係者間で明確な共通認識をもっておかないと、制作過程でブレが生じてしまいます。
必ずしも明確なKPIなどを設ける必要はありませんが、制作の目的については関係者間で明確な共通認識を形成しておくことが必要です。
ターゲットを明確にする
すごくすごく当たり前のことですが、これも見落とされがち…というか動画を制作するにあたっては少し解像度が荒い状態であることが多いです。
パーパスムービーのターゲットは殆どの場合「自社の社員」「顧客」のいずれか・もしくは両方となることが多いです。
- 自社社員…どのような社員がよりコアなターゲットか。活躍している社員なのか、くすぶっている社員なのか。
- 顧客…既存顧客なのか、新規顧客なのか。
…など、可能な範囲で具体化しておいたほうが企画立案だけではなく、社内関係者感の共通認識も形成しやすくなります。
企画に関して言えば、ターゲットがより具体的であればあるほど、動画としてもより具体的でターゲットが共感しやすい企画を立案しやすく、ターゲットが幅広く抽象的であればあるほど、「言いたいことはわかるけど、なんかぼんやりしている」動画になりやすいです。
前述の「目的」と紐づくため、ターゲットのことだけを考えても答えはでません。もしこの記事を読んで「あ…」と思った方は目的と合わせてどのようなアプローチが最適であるかについて、もう一度考えてみてはいかがでしょうか。
予算を確保する
目的・役割とターゲットが明確になれば、「この人に、この情報を、こんなふうに伝える」ということまで決めることができます。
しかし、予算が足りなければ「こんなふうに伝える」の部分が弱くなってしまったり、十分に表現できない可能性があります。
例えば、
- 未来的なあり方を表現するために、3DCGが必要
- 様々な事業における存在意義を提示するために、複数パターンの撮影が必要である
- 自社の社員のインタビューが必要
など、適切な演出を加えたくてもそれらの機材・人を用意できなければそれは叶いません。
パーパスムービーはある程度費用を抑えてのの制作も可能ですが、企画内容によって制作費は大きく変わるため、できる限りお財布には余裕をもたせておいたほうが良いでしょう。
視聴後に抱いてほしい感情・心情を明確にする
動画を見たあとに、ターゲットに「どのような感情になって欲しいか」「どんな心情を抱いてほしいか」を明確にしましょう。
この点もやはり目的と紐づくため、この点だけを切り離して考えることはできませんが、
・強く共感し、より高いモチベーションで働いてほしい
・自分の仕事は高い社会性を帯びていることを思い出してほしい
・競合他社との違いは、サービスや製品のスペックだけではないと理解・共感してほしい
など、目的によってどのような感情・心情を抱いてもらうことが望ましいかも決まってきます。なんの脈絡もなく「かっこいい動画」「感動的な動画」などのような議論にならないよう気をつけましょう。
パーパスムービーの事例
パーパスムービー2023「ONE PERSON ONE PURPOSE」
デンソー ブランドパーパス
テルモ株式会社「TERUMO’s Purpose」(2022)
ミヨシ油脂パーパス映像
商工中金 PURPOSE 「企業の未来を支えていく。日本を変化につよくする。」
最後に
いかがでしたでしょうか。繰り返しになりますが、パーパスムービーの制作は、「パーパス」というテーマの抽象性の高さから共通認識の形成や目的・ターゲットの明確化など情報整理が難しいという特徴があります。しっかりと情報を整理した上で、代理店や制作会社と連携して動画制作を行ってみて下さい。
情報整理や予算の検討などの事前準備がご不安な方は筆者がお手伝いいたします。
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